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旅行中ニューヨークで出産、そして驚きの診療費!恐ろしいアメリカの医療制度

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ニューヨークに遊びに来ていたイギリス人カップルが、出産の予定日よりずいぶん早くに、ニューヨークで出産することになってしまい大変なことに、というのがニュースになっていました。

セントラルパークを歩いている時に陣痛がきてしまい、妊娠29週目の早産になってしまいました。
11週間も早く産まれてしまった赤ちゃんは3 pounds(1360g)、未熟児なので当然入院必須の状態。
5日間の旅行予定で訪れたニューヨークでしたが、付き添うために滞在は12週間に延びてしまうそうです。そんな状態で気になるのが悪名高いアメリカの医療費とその他諸経費です。

赤ちゃんは、Lenox Hill Hospitalに入院しており、両親は、Ronald McDonald Houseに滞在中です。Ronald McDonald Houseとは、難病の子供の治療で長期滞在を余儀なくされる家族のための宿泊施設で、ニューヨークではこの病院の近くにあるそうで、その他、世界の様々な場所でも運営されているようです。日本にも「ドナルド・マクドナルド・ハウス」があり、どこもボランティアによって運営されていて、滞在費もニューヨークであれば1泊35ドル、日本だと1泊1000円くらいで滞在できるそうです。もともとはあるアメリカンフットボール選手の子供が白血病治療の際、家族の大変さを実感し、こういう施設の必要性を知り、フィラデルフィアの小児病院に作ったのが始まりでした。その後、マクドナルドが支援を続けてきたため、名前がRonald McDonald Houseになったそうです。

5日間のニューヨーク旅行が大幅に延びてしまった家族もこの施設のおかげで滞在できているようですが、問題は病院への支払いです。日本やイギリスなど良心的な医療費の国から来ると、ひっくり返ってしまうほどビックリな現実が、アメリカの医療制度にはあります。今回のこのイギリスからの旅行者の出産費用、入院費用、赤ちゃんの入院費用等、想定で$200,000(約2400万円)と言われています。アメリカ医療の現実を知っている人にとっては、そうだね、それくらいだろうね、と思えるのですが、他の国の人がそんな請求書を見たら驚いてしまいますよね。もちろん、保険がカバーしてくれるのなら、そんな大きな出費にはなりませんが、保険会社が支払ってくれないケースになった場合は大変です。アメリカで破産してしまう原因のひとつにこの医療費の支払いがあるくらいです。幸い、今回のカップルの場合は、事前に担当医からOKと言われ、保険会社に連絡していたこともあり、医療費に関してはしっかりと支払われるそうです。

イギリスの友人たちが、現在彼らの滞在費等をカバーするためにファンドレイジングをしているそうです。”no money, no clothes, no friends or family” in New Yorkとメッセージを書き込み行うネット上での募金集めの効果は、驚いたことにすでに$9,660が集まっており、インターネットがもたらす奇跡が起こっています。最近隆盛のクラウドファンディング、こんなに簡単に多くの人に伝えることができ、困っている人を助けることができる手段が存在するのはありがたいことです。医療費が保険から出ることもあり、残った金額は、Ronald McDonald Houseに寄付するそうです。

以前には、ハワイに旅行に来ていたカナダ人カップルも同様のケースで、$950,000も請求されたというニュースもありました。こちらは旅行保険に加入していたにも関わらず、保険会社がpre-existing conditionを理由に支払いを拒否しているようです。アメリカ滞在の際には、万が一に備えて保険に加入、条件を確認しておくのが良さそうです。

ちょっと入院しただけでも数万ドル請求され、保険会社を通すとその値段がなぜか急変、激減するなど、アメリカ暮らしで、最も非効率的で遅れていると感じるのが医療制度ですが、やはり他の欧米諸国と比べてもコストは圧倒的に高く、パフォーマンスは低いというこんなレポートもあり、納得。競争が起こりにくく、プライスの透明性のない世界で私企業が中心になるとこんな風になってしまうといういい例かもしれません。オバマケアは、変革の第一歩として評価されてもいいのかもしれませんが、小手先の変更ではなく、国の運営するユニバーサル健康保険、または医療機関のプライス、パフォーマンス、バリューの透明性を高めるための強制的な制度が必要であるように感じます。

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ネットのおかげで、多くの業界の透明性も高まり、人々にとってより便利な世界になりつつありますが、医療をはじめ、政治、行政、法律、金融と昔からの長い歴史のある世界がまだまだ不透明のまま残っています。テクノロジーを活用し、どんどんこれらの領域に食い込んでいくような新しいアイデアに期待しましょう。

ところで、予期せず、アメリカで生まれてしまった赤ちゃん、アメリカは、出生地主義であるのでアメリカで生まれた赤ちゃんは親の国籍に関わらずみんなアメリカ人になる権利を持っています。イギリス人でもあり、アメリカ人でもある状態、もちろん放棄できますが、アメリカで生まれたため、この赤ちゃんはアメリカの大統領になる権利もオプションとして手に入れてしまいました。

旅行中ニューヨークで出産、そして驚きの診療費!恐ろしいアメリカの医療制度 was last modified: 9月 7th, 2016 by mikissh