イタリア一の人気ミュージアム、フィレンツェのウフィツィ美術館は必見スポットです!イタリア、トスカーナ地方の中心都市、フィレンツェは、メディチ家の下、ルネサンスの中心となり、アート、建築、文学が栄え、その栄華は、世界遺産にも登録されている、今も残る美しい街並みからも感じることができます。そんなフィレンツェの見逃せない観光スポットの一つが、イタリアで最も入場者数を誇る、ウフィツィ美術館 (Uffizi Gallery) です。アルノ川沿いにある風情のある歴史的な建物に、レオナルドダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ボッティチェリら、ルネサンスに活躍した巨匠たちの有名作品を中心に、メディチ家の膨大なコレクションが展示されており、西洋美術好き必見の見どころの多いミュージアムです。
ウフィツィ美術館
イタリアといえば、古代ローマ、カトリック、そしてルネサンスなど西洋文化に大きな影響を与えてきた国ですが、メディチ家の下、14世紀頃から栄え、ルネサンスの中心となっていたのが、毛織物業や金融など商業が盛んだった、トスカーナ地方の中心都市、フィレンツェです。
そんな、メディチ家のアートコレクションが揃い、ルネサンスの中心となった中世フィレンツェの隆盛が感じられる、イタリアでトップレベルの人気を誇る世界有数の美術館が、ウフィツィ美術館 (Uffizi Gallery) です。
ウフィツィ美術館は、世界遺産に指定されている、フィレンツェの街の中心、フィレンツェ歴史地区にあり、世界遺産の一部となっています。ウフィツィ美術館は、メディチ家の宮殿だった、ベッキオ宮殿に隣接し、アルノ川の畔に、かつて政府の庁舎だった、1581年に完成した歴史的な建物に入っています。ミケランジェロや、レオナルドダヴィンチなど、ルネサンス美術について記したアート史作家としても知られ芸術家でもあり建築家でもあった、ジョルジョ・ヴァザーリ (Giorgio Vasari) は、1560年、メディチ家のコジモ1世の命により、この建物の建築を手掛け、その後、何人かの建築家を経て完成に至りました。ギャラリーへは、既に16世紀から訪問者を受け入れていたそうで、18世紀、メディチ家衰退後、市へ寄贈され、1765年に一般開放、そして、1865年から正式に美術館となりました。ウフィツィ美術館
館内からは、ヴェッキオ橋(ポンテベッキオ)と、アルノ川周辺の美しい景観も楽しめます。ベッキオ宮殿と対岸のピッティ宮殿とを結ぶ、屋根付きの通路は、ヴァザーリの回廊 (Vasari Corridor) と呼ばれ、ポンテベッキオの上階を通っています。
ウフィツィ美術館は、ギャラリーに展示されている作品も素晴らしいのですが、合わせて、趣のある歴史ある建物の廊下の天井に描かれた天井画や両脇に飾られている彫刻群も見どころの一つです。
ウフィツィ美術館の館内のカフェで一休みすると、すぐ目の前には、お隣のベッキオ宮殿が見られます。フィレンツェの象徴であるドゥオーモのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂も見ることができ、屋外に出てフィレンツェの景色も楽しめる素敵なロケーションにあります。
ウフィツィ美術館への行き方
フィレンツェは、徒歩で動き回ることができる、とても観光しやすい小さな街です。ウフィツィ美術館があるのは、フィレンツェの中心で、ベッキオ宮殿のあるシニョリーア広場とアルノ川の間で、街の中心に滞在している場合は、徒歩で簡単に訪れることができます。最寄りの駅は、サンタマリアノヴェッラ (Santa Maria Novella) 駅となり、徒歩20分前後で到着できます。
ウフィツィ美術館
Uffizi Gallery (Galleria degli Uffizi)
Piazzale degli Uffizi, 6, 50122 Firenze FI, Italy 地図
ウフィツィ美術館のチケット・入館方法
ウフィツィ美術館は、世界中から旅行者が押し寄せる観光国イタリアの中でも、一二を争う大人気ミュージアムで、大行列を避けけるために事前予約が必須です。時間指定のチケットを オンライン予約 で購入することができます。チケット料金は、EUR26 となります。
ウフィツィ美術館は、ウフィツィ広場 (Piazzale degli Uffizi) の道沿いの両側の建物からなりますが、入館前に、事前予約をチケットに交換する必要があり、交換所は、館外のウフィツィ広場から西側に伸びる細い道、Via Lambertesca の近くのドア3にあります。事前予約した時間の15分程前にチケットの交換を済ませます。
チケット入手後、ドア1番のラインに並び、入館します。以前は、予約者でもそれなりの行列が出来ていました。ドア2は、当日チケット購入者用で、こちらはもっと大行列になっていました。
ウフィツィ美術館の見逃せないハイライト必見作品
ウフィツィ美術館の一番の見どころは、ルネサンス期を代表する作品の数々です。ルネサンス絵画の代表作とも言える、ボッティチェリの作品、ハイルネサンス期に活躍したダヴィンチ、ミケランジェロら三大巨匠の作品など素晴らしい作品が揃っていますが、その中でも、絶対に見逃せないトップのハイライト作品5点からまず紹介します。これら有名作品だけは必ず覚えて見逃さないようにしましょう。
これら必見有名作品に加えて、ウフィツィ美術館には有名作品が軽く30作品以上あります。各作品の詳細は、すぐ後に続く、「ウフィツィ美術館のギャラリーの回り方」のところで、順番に紹介していきます。ウフィツィ美術館は有名作品が目白押しで感動すると思います。是非楽しんでください。
1.ボッティチェリ プリマヴェーラ
2.ボッティチェリ ヴィーナスの誕生
3.レオナルド・ダ・ヴィンチ 受胎告知
4.ミケランジェロ 聖家族
5.カラヴァッジョ メドゥーサ
ウフィツィ美術館のギャラリーの回り方と有名作品
ウフィツィ美術館のギャラリーは、2フロアからなり、小部屋のギャラリーが100室ほどあります。まず最初に向かうのが、ダビンチやミケランジェロ、ボッティチェリなどの有名作品が目白押しのフロア、下図の館内マップにある、2階 (Planta2) です。ウフィツィ美術館の回り方は、ギャラリー番号順に進んでいくと、迷うことなく全部見終えることができます。順路に沿ってギャラリーを進んでいくと、まだビザンチン美術の影響が残る13世紀後半頃の作品からスタートし、ルネサンス期の作品を中心に、17世紀初頭前後のバロック期までのイタリア絵画の名作の数々が順に展示されています。途中、古代ローマやギリシアの彫刻やそのコピー、北方ルネサンス、オランダ絵画など同時代のヨーロッパ各国の巨匠の作品も一部展示されています。以下館内地図の見学コースの順番におすすめの有名作品を紹介していきます。
ウフィツィ美術館は、建物の内装も美しく見どころとなっています。美術館の2階廊下に着くと、まず豪華な天井のある長く美しい廊下と、天井に描かれている色とりどりのフレスコ画、両脇にずらりと並ぶ美しい彫刻に圧倒されます。天井や窓枠などに木がたっぷりと使われている、とても美しい空間です。
2階に到着し、一番最初に登場するのが、ギリシア神話のヘラクレスとネッソス (Hercules and Nessus) の作品です。古代ローマ時代の彫刻を修復したもので、なんと1597年から、400年以上もここに飾られているそうです。ネッソスは、半獣半人のケンタウルスのことです。
チマブーエ サンタトリニタの聖母
展示は、ルネサンス期以前のビザンチン美術の影響の強かった、13世紀後半頃の作品からスタートします。ルネサンス以前、トスカーナ地方では、当時の大帝国、東ローマ帝国とも呼ばれるビザンチン帝国の影響が色濃いスタイル (Italo-Byzantine) で、モザイクや聖母子像をモチーフとした作品が多く描かれていました。
ルネサンス以前で、名前の知られる最初のアーティストが、フィレンツェで活躍した、チマブーエ (Cimabue) です。こちらは、チマブーエが、13世紀末頃、フィレンツェの教会、Santa Trinita のために描いたとされる、聖母子を中心とする巨大な作品、『サンタ・トリニタの聖母』(Santa Trinita Maestà) です。ウフィツィ美術館の見どころの一つとして有名なチマブーエの『サンタ・トリニタの聖母』については、こちら の映像で詳しく紹介されています。
ドゥッチオ 玉座の聖母子と六天使
チマブーエ (Cimabue) より若干後に生まれていますが、ほぼ同時代に同じトスカーナ地方のシエナで活躍し、後に一連のアーティストを生んだ、シエナ派の祖とされる巨匠が、ドゥッチオ (Duccio) です。当時、トスカーナ地方のフィレンツェとシエナは、教皇派 (Guelphs) と 皇帝派 (Ghibellines) に分かれた、ライバル都市だったようですが、作風には、共通性が感じられます。こちらは、ドゥッチオが、1285年に受注し、フィレンツェの教会、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会 (Santa Maria Novella) のために描いたとされる、『ルチェライの聖母』(Rucellai Madonna) と呼ばれる『玉座の聖母子と六天使』です。当時の契約の詳細が残されているという珍しい作品です。
現在、宗教画をもともと飾られていた教会に帰そう、という動きがあるようで、この作品も、そのうちサンタ・マリア・ノヴェッラ教会に移る可能性もあるようです。
ジョット 荘厳の聖母
ルネサンス以前の初期フィレンツェで、最も有名なアーティストで、建築家と言えば、ドゥオーモの横に立つ「ジョットの鐘楼」などで知られる、ジョット・ディ・ボンドーネ (Giotto di Bondone) です。フィクションとノンフィクションが入り交じった感じのアート史を残した、ヴァザーリ (Vasari) によると、チマブーエ (Cimabue) は、ジョットの才能を認め、リクルートし、弟子にしたそうです。
こちらは、ジョットが、フィレンツェの教会、オンニサンティ教会 (Ognissanti) のために、1310年頃に描いた作品『荘厳の聖母』(Ognissanti Madonna) です。平面的なビザンチン美術の作風から離れ、より自然に人間らしく立体的に描かれており、最初のルネサンス絵画とも呼ばれています。
シモーネ・マルティーニ 受胎告知
シモーネ・マルティーニ (Simone Martini) は、国際ゴシック様式 (International Gothic) に大きな影響を与えたことでも知られている、シエナ派のアーティストです。ジョットの少し後ですが、ほぼ同時代に、皇帝派でシエナで活躍していました。シモーネ・マルティーニの代表作は、1333年頃の Lippo Memmi との共作で、かつてシエナ大聖堂に飾られていたという、『受胎告知』(Annunciation with St. Margaret and St. Ansanus) です。
ロレンツォ・モナコ 聖母の戴冠
こちらは、シエナ出身で、14世紀末から15世紀初頭にかけて、フィレンツェで活躍したアーティスト、ロレンツォ・モナコ (Lorenzo Monaco) の 1414年の一際巨大な作品、『聖母の戴冠』(Coronation of the Virgin) です。シエナ派らしい国際ゴシック様式の平面的、神秘的な色使いが印象的です。
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ 東方三博士の礼拝
ロレンツォ・モナコと同様の国際ゴシック様式で、同時代に活躍した、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ(Gentile da Fabriano) の1423年の作品 『東方三博士の礼拝』(Adoration of the Magi)。イタリア各地で活動し、晩年をフィレンツェで活動しましたが、その頃、描いたもので、代表作の一つです。
フラ・アンジェリコ 聖母の戴冠
中世ヨーロッパでは、アートは、主にキリスト教により支援されていたこともあり、アーティストは、修道士であることも多かったのですが、修道士を意味する「フラ」をニックネームに持つ、フラ・アンジェリコ (Fra Angelico) もトスカーナ州で生まれ、フィレンツェのサンマルコ修道院などイタリア各地の修道院で、作品を製作し、初期ルネサンスの15世紀前半に活躍した、最もよく知られるアーティストです。ロレンツォ・モナコや、シエナ派から影響を受けている感じですが、そこに独自の雰囲気が加わっている感じがする作風です。こちらは、フラアンジェリコが1432年に描いた『聖母の戴冠』(Coronation of the Virgin) です。サンマルコ修道院に残されている壁画『受胎告知』(In The Annunciation) も有名です。
パオロ・ウッチェロ サンロマノの戦い
古典西洋美術といえば、宗教画が定番ですが、戦場など当時としては一風変わったモチーフを描いていた、初期ルネサンス、15世紀中頃のフィレンツェで活躍したアーティストが、パオロ・ウッチェロ (Paolo Uccello) です。こちらは、1432年に起こったシエナとフィレンツェ間の戦争、『サンロマノの戦い』(The Battle of San Romano) を描いた作品で、実は3部作の連作で、パリのルーブル美術館と、ロンドンのナショナルギャラリーに残りの二枚があります。遠近法を使い、臨場感溢れる迫力ある作品となっています。
フラ・フィリッポ・リッピ 聖母子と二天使
15世紀後半になり、絵画に描かれる人物が次第に現実味のある人になっていきます。以前までの聖母子の作品と比べると、フラ・フィリッポ・リッピ (Fra Filippo Lippi) の1465年の作品『聖母子と二天使』(Madonna and Child with Two Angels) は、より現実的で実在する人間らしい感じになってきています。ボッティチェリ風な感じも受けますが、フラ・フィリッポ・リッピは、ボッティチェリの師匠だったそうで、納得です。
ピエロ・デラ・フランチェスカ ウルビーノ公夫妻の肖像
イタリア初期ルネサンス期を代表する画家、ピエロ・デラ・フランチェスカ (Piero della Francesca) が、1472年前後に描いた、『ウルビーノ公夫妻の肖像』(Diptych of Duke Federico da Montefeltro and Duchess Battista Sforza of Urbino) です。西洋美術は、宗教アートからスタートしましたが、15世紀後半になると、有力者の肖像などかなり幅広いモチーフが描かれるようになっていたようです。ピエロ・デラ・フランチェスカは、数学や幾何学などにも通じており、遠近法を用い、現実のように描いています。
ボッティチェリ 『プリマヴェーラ』『ヴィーナスの誕生』
ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロらルネサンス三大巨匠と並んで、ウフィツィ美術館で、最も人気のあるのが、ルネサンスと言えば、思い浮かぶ、サンドロ・ボッティチェリ (Sandro Botticelli) です。
こちらは、ボッティチェリの1480年頃の作品『プリマヴェーラ』(Primavera) です。神話のような神秘的な世界が描かれています。
こちらは、プリマヴェーラ同様ボッティチェリの代表作として広く知られる、『ヴィーナスの誕生』(The Birth of Venus) です。1484–1486年頃に描かれた作品です。ギリシア神話のヴィーナスが大きな貝殻の中に立つ美しい姿の幻想的な世界を描いています。
トリブーナ & メディチヴィーナス
ギャラリー見学の途中に、立入禁止のお部屋があります。外から鑑賞することができる八角形のギャラリーで、トリブーナ (Tribuna) といいます。トリブーナの中央には、17世紀後半以降、ギリシア神話のアフロディーテ像を模造した、紀元前1世紀頃の大理石の彫刻、『メディチヴィーナス』(Medici Venus) と、お部屋の形と同じ八角形のテーブルがあります。豪華なメディチ家のコレクションと貝で装飾された天井なども必見で、かつて、ウフィツィ美術館で、最も有名で、シンボル的な存在だったお部屋です。トリブーナは、絵画のモチーフとして、西洋絵画でもよく描かれています。
ウフィツィ美術館の2階からは、所々で、フィレンツェの美しい街並みも楽しめます。フィレンツェを代表する景観、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂や、ジョットの鐘楼なども見えます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 『受胎告知』『東方三博士の礼拝』
2階の後半部分には、いよいよダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロら、ルネサンス三大巨匠の作品が揃うギャラリーがでてきます。最初に登場するのは、最年長のレオナルド・ダ・ヴィンチ (Leonardo da Vinci) です。
こちらは、ダヴィンチの初期、1472年の作品『受胎告知』(Annunciation) です。ドレープ部分など現実以上にリアルに描かれていて、生涯に渡り、リアリズムを追求し続けた偉大なアーティストです。
ダヴィンチの未完の作品もあります。1481年ダヴィンチ作の『東方三博士の礼拝』(Adoration of the Magi)。
昨年は、ダヴィンチ没後500周年記念の年で、ルーヴル美術館では、史上最大規模のダヴィンチ展が開催され感動の作品群でした。
ヴェロッキオ キリストの洗礼
こちらは、ダヴィンチの師匠だった、ヴェロッキオ (Andrea del Verrocchio) の 1472–1475年の作品『キリストの洗礼』 (The Baptism of Christ) です。左側の天使のドレープ部分などは、ダヴィンチが描いたとされています。
ダヴィンチの記念の年に合わせ、ワシントンDCのナショナルギャラリーでは、ヴェロッキオの特別展も開催されていました。
ミケランジェロ 聖家族
ダヴィンチや、ラファエロと並ぶ、ルネサンス三大巨匠のひとりである、ミケランジェロ(Michelangelo) 。ダヴィンチやラファエロは、絵画を多く描いていますが、ミケランジェロは、彫刻を中心としたアーティストだったため、絵画作品は、バチカンのシスティーナ礼拝堂の『最後の審判』や天井画など数える程しか残していません。
そんなミケランジェロの稀な絵画作品が、16世紀初頭、1507年頃に描かれた、こちらの『聖家族』(The Holy Family / Doni Tondo) です。額縁も素晴らしいです。
ニューヨークのメトロポリタン美術館で、ミケランジェロの特別展が開催された際には、驚くほど大盛況でミケランジェロの人気度が伺えました。
ラファエロ ひわの聖母
ダヴィンチやミケランジェロと並ぶ、ルネサンス三大巨匠のひとりである、ラファエロ (Raphael)。ラファエロは、ダヴィンチ、ミケランジェロよりかなり年下で、二人の巨匠に大きな影響を受けています。ダヴィンチらの作品を彷彿とさせるこちらは、ラファエロが、20歳過ぎ、1505–1506年頃の作品『ひわの聖母』(Madonna of the Goldfinch) です。聖母の下、幼いキリストが、聖ヨハネが抱えている小鳥のゴールドフィンチに手を伸ばしているというモチーフで、十字架にかけられるキリストを暗示しているそうです。
こちらは、ラファエロ・サンティ (Raffaello Santi) が、1518-1519年頃に描いたとされる『砂漠の洗礼者聖ヨハネ』(Saint John the Baptist in the Desert) です。ダヴィンチら様々なアーティストが描いているモチーフです。
ラファエロは、フィレンツェで活動していた時期もありますが、最も活躍したのがローマで、代表作の数々は、ローマのバチカン美術館に収蔵されています。今年は、ラファエロ没後500周年で、ローマでは、3月から史上最大のラファエロ展が予定されていましたが、コロナのため閉鎖されていました。今日から、EU圏での旅行が再開されたイタリアですが、ラファエロ展は順延 され、6月2日から8月30日まで開催されます。現地を訪れることができないという人のためにも、ラファエロ展の様子が、オンラインで公開されていて見ることができます。
ピエロ・ディ・コジモ アンドロメダを救うペルセウス
こちらは、ダヴィンチらルネサンス最大巨匠が活躍したルネサンス盛期の同時代の異色のアーティスト、ピエロ・ディ・コジモ (Piero di Cosimo0 の1510-1515年頃の神話をもとにした作品『アンドロメダを救うペルセウス』(Perseus Freeing Andromeda) です。同時代にオランダで活動していた、ヒエロニムス・ボス (Hieronymus Bosch) を少し彷彿とさせる、ファンタジー的な世界が描かれていますが、16世紀初頭にすでにこのようなシューレアリスム的な作品が描かれていたことにビックリしました。
ニオベルーム Niobe room
ギリシア神話から名づけられた巨大な部屋、ニオベルーム (Niobe room) には、広大な空間に、ドラマチックな彫刻や巨大な絵画が飾られています。
Sleeping Hermaphroditus といえば、紀元前2世紀頃にギリシアで作られたとされる、ルーヴル美術館のオリジナルが有名ですが、古代ローマ時代の模造された作品が、ウフィツィ美術館にもあります。
イタリア以外の同時代のアーティストの作品のギャラリーもあり、神聖ローマ帝国、現在のドイツのアーティスト、アルブレヒト・デューラー (Albrecht Dürer)、ルーカス・クラナッハ (Lucas Cranach the Elder) ら北方ルネサンスの作品も展示されています。左側は、ルーカス・クラナッハ (Lucas Cranach the Elder) 、右側は、ハンス・バルドゥング・グリーン (Hans Baldung Grien) の2人のアーティストが描いた『アダムとイヴ』。
2階の最後を締めくくるのは、バチカン美術館のピオ・クレメンティーノ美術館にある、ラオコーン (Laocoön and his Sons) をコピーした、バッチョ・バンディネッリ (Baccio Bandinelli) の迫力ある彫刻です。
ギャラリーを出て、順路を進んで行くと、カフェや、トイレ、屋外テラスなどがあり、休憩することができます。テラスからは、ベッキオ宮殿を間近に、ドゥオーモを少し遠くに見ることもできます。少し休憩したら、次は1階のギャラリーに続きます。
1階のギャラリーでは、16世紀中頃、ルネサンス盛期以降、主に、マニエリスム、ベネチア派、バロック期の作品が展示されています。
パルミジャニーノ 首の長い聖母
1519年にはダヴィンチ、1520年にラファエロが亡くなり、その後は、そんなルネサンス盛期の巨匠たちに強い影響を受けながら、現実とは違った少し誇張した感じの作風「マニエリスム」が隆盛となり、16世紀末頃、バロックアートが登場するまで続きます。
こちらは、マニエリスムの代表的アーティストの一人、パルミジャニーノ (Parmigianino) の1534–1535年頃の作品『首の長い聖母』(Madonna with the Long Neck) です。宗教画ですが、全く違った雰囲気の作品になっています。
ティツィアーノ ウルビーノのヴィーナス
16世紀に数多くの著名アーティストを輩出したベネチア派を代表するアーティスト、ティツィアーノ (Titian) の1534年頃の作品『ウルビーノのヴィーナス』(Venus of Urbino) です。モチーフは、美しいヴィーナスで、神話の世界を描いているのですが、かなり現実的なタッチの絵画であり、後に、マネら様々なアーティストが、この構図で描いています。
ヴェロネーゼ Veronese
ティツィアーノに続いたベネチア派のティントレットやヴェロネーゼの作品も色々展示されています。
ヴェローナ出身で、ベネチアで活躍したヴェロネーゼ (Veronese) は、ティツィアーノの影響が強く感じられるアーティストで、よく一緒に飾られています。こちらは、ヴェロネーゼの1565年頃の作品『聖家族』(Holy Family with Young St John and St Catherine) です。
カラバッジョ 『バッカス』『メデューサ』
16世紀末、当時隆盛だったマニエリスムに、革命的な変化をもたらしたのが、バロックアートです。バロックアートの代表的アーティストの一人が、ローマで活躍した、カラヴァッジョ(Caravaggio) です。キアロスクーロと呼ばれる明暗法や原色を多用し、感情を表現したようなドラマチックな作風で知られています。
こちらは、カラバッジョの1595年頃の作品『バッカス』(Bacchus) です。バッカスといえばワインの神様ですが、顔を赤らめている感じがよく伝わってきます。
カラヴァッジョ(Caravaggio) の 1597年の作品『メドゥーサ』(Medusa) です。ギリシア神話に登場する、見たものを石に変えてしまう恐ろしいメドゥーサ。今にも動き出しそうな迫力の作品で、とても人気がありました。
カラヴァッジョの作品は、ボルゲーゼ美術館をはじめ、ローマの色々な美術館や教会で見ることができます。
Artemisia Gentileschi
古典西洋美術の世界では女性アーティストは、珍しいのですが、こちらは、17世紀バロック期に活躍した、ローマ出身で、フィレンツェでも活動していた時期がある女性アーティスト、アルテミジア・ジェンティレスキ (Artemisia Gentileschi) の1614–1620年頃の作品で、カラヴァッジオを彷彿とさせるようなドラマチックな作品で、旧約聖書の一場面を描いた『ホロフェルネスの首を斬るユディト』(Judith Slaying Holofernes) です。
ウフィツィ美術館のコレクションは、17世紀前半までの作品となりますが、イタリアのアーティスト以外では、レンブラント、ルーベンス、アンソニー・ヴァン・ダイクらの作品も展示されています。
ギャラリー見学の最後には、ミュージアムショップに立ち寄ります。
ウフィツィ美術館は、メディチ家のコレクションということもあり、有名作品目白押しのミュージアムです。
ウフィツィ美術館の見学所要時間は、通常3時間程、ゆっくりと見て回るには、4時間程見ておくといいと思います。
西洋美術好きの人には、フィレンツェを訪れたら、見逃せないおすすめの美術館です。