アメリカの物価の上昇とインフレが懸念されていましたが、ついにアメリカの物価もここしばらく減速してきています。2021年3月以来最も低い数字となる消費者物価指数 (CPI) 2.5% まで下がってきました。一昨年の2022年は、消費者物価指数 (CPI) が 7% 以上という、40年振りの高水準のインフレとなっていましたが、直近では 2% 台まで下がり、アメリカの物価が落ち着いてきています。
まだ残る問題は、いまだに住居費の上昇が続いていることで、消費者物価指数が、目標に掲げる 2% に到達するには、まだもう少し時間がかかりそうな様子です。インフレを支えていた消費がようやく4月頃から弱まり始め、労働市場、その他の経済指標にも景気減速の影が見えはじめています。そんな状況のアメリカではいよいよ久しぶりの利下げが間近に迫りつつある中、今日、アメリカの物価・インフレ率を表す、2024年8月の消費者物価指数 (CPI) が発表されました。
アメリカの重要なインフレ指標
消費者物価指数 (CPI) とは、モノやサービスなど、アメリカの物価の動きを捉える経済指標で、アメリカ労働統計局により毎月中旬頃に発表されています。全ての物価を総合した「消費者物価指数 (CPI) 」と、価格変動の大きいエネルギー関連と食費を除いた「コアCPI」があります。
消費者物価指数 (CPI)
8月の消費者物価指数 (CPI) は、市場の予想値 2.6% を若干下回る、2.5% となりました。
8月は、先月同様、ガソリンなどエネルギー関連価格が横ばいの中、住宅費が上がり全体としては、市場の予想通り、7月に引き続き、0.2% 上昇となりました。ただし 1年間のCPIでみると下がってきているため、目標値の 2% に近づいてきています。
コアCPI
価格変動の大きいエネルギー関連と食費を除いた「コアCPI」は、市場の予想を上回り、1ヵ月間で 0.3%、1年間で 7月同様、3.2% の上昇となりました。
アメリカの金利の上昇
CPIの動向が、大きく影響を与えるのが、アメリカの政策金利の水準です。パンデミック以降、FF金利(フェデラル・ファンド金利)がゼロの状態が続いていましたが、インフレ抑制のため、その後の一年間で、急激な利上げが行われ、現在、FF金利は、5.25 – 5.50% となっています。ここしばらく政策金利を決定する会議、FOMCでは金利変動なしが続いていましたが、次回9月のFOMCで利下げがスタートすると予想されています。
一昨年から急激な利上げが行われてきましたが、昨年2023年後半からはずっと様子見が続いていました。
→ アメリカ金利 8連続で利上げなし!2024年7月 FOMC そろそろ利下げの可能性
今年春以降の消費の弱まりと共に、労働市場、その他の経済指標が弱くなって来ているため、FRB議長のパウエルさんの直近のコメントなどでは、そろそろ利下げの必要性も出て来ていることを匂わせています。次回の FOMC は 9月17、18日ですが、久しぶりの25bpの利下げが予想されています。
インフレの加速により、その抑制のために、アメリカで金利がどんどん上げられてきましたが、それに伴い、モーゲージレート、ローン、クレジットカードなどの借入金利が上昇しました。
その一方、預金の金利も上がってきたため、利子が上昇し、アメリカに預金がある人たちにはうれしい恩恵もありました。
利下げがスタートすると、これら、預金の金利なども下がってきてしまうことになります。
消費者物価指数 (CPI) 2024年8月の詳細
2024年8月の消費者物価指数 (CPI) が、9月11日、アメリカ労働統計局 (Bureau of Labor Statistics) により発表されました。8月のCPIは、市場の予想を若干下回る 2.5% となっています。1ヵ月間の上昇は、7月同様、0.2% でした。
価格変動の激しいエネルギーと食費を除外した、コアCPIに関してはしばらくフラットが続いていましたが、5月から下がって来ています。
8月のコアCPIは、1ヵ月で 0.3%、1年間では 3.2% の上昇となり、先月と同水準となっています。
7月のCPI変動の主な要因
8月のCPIの最大の要因となったのも、7月同様、根強いインフレ圧力が続く「住宅費」でした。ここ数ヵ月、ちょうどそれを打ち消すように下落していたガソリンをはじめとした、エネルギー関連価格は微減で、その他は、微増微減の項目が多く、全体では、0.2% の上昇となっています。
ガソリン・エネルギー費
8月は、変動の激しいガソリン価格、エネルギー関連全体は、7月同様あまり変動がなく、微減となっています。
食費
多くの人々の生活に影響を与える、食費 (自宅 0.0%、外食 0.3%) は 0.1%の上昇で、1年間では 2.1% の上昇となっています。
アメリカのスーパーマーケット、トレーダージョーズなど、あまり値段変動がないスーパーマーケットでも食品の値上がりが見られる場面もありましたが、一般的には値段が下がって来ているものもあります。
ですが、卵の値段は、鳥インフルエンザなどの影響もあり、上下動が激しくなっています。ここしばらく落ち着いて来ていましたが、7月の 5.5% に続き、8月は 4.8% と大きく上がり、一年間では 28.1% の値上がりとなっています。
住宅費
アメリカの住宅費は 6月は 0.2% と少し落ち着いた感がありましたが、7月は、再び0.4% に戻り、8月は、0.5% とさらに上昇しています。アメリカの住宅費の上昇は、1年間では、5.2% となっています。
住宅費の上昇に関しては、上場企業、プライベートエクイティなどによる近隣一帯を同じ家主が占有する家主の大規模化や、住宅価格のプライシングを手助けするAIや秘密のアルゴリズムなどと称するサービスの登場によって、実質的にカルテル効果をもたらしてしまっていることなども影響している可能性があり、注目が集まっています。
不動産は、価格つり上げ (price gouging) が行いやすいため、それを防ぐためのルールが数多く存在します。ソフトウェアを用いてそんなルールを回避するメカニズムは、例えば、ProPublica の記事などで紹介されており、現在、国会などで禁止にする法案が検討されています。
先日、とうとう司法省(DOJ)が、RealPage を訴えましたが、住宅費上昇の圧力をもたらしている隠れカルテルの影響が取り払われることがのぞまれます。
旅行費用・交通費・航空券
交通費は、5、6月と下落していましたが、7月の0.4% に続き、8月は、0.9%の上昇となりました。一年間では 7.9% の値上がりとなっています。
航空券は、少しリベンジ旅行ブームが落ち着き下落傾向が続いていましたが、夏休みの影響もあり 3.9% 上昇に転じました。ただ夏の旅行シーズン終了時期となる8月末頃から再び下がって来ている印象です。
その他、大幅な値上がりが続いていて、最近の注目となっている車両保険は、今月も 0.6% の上昇となっています。1年間では、16.5% の上昇となっています。
8月のCPI に関する詳細は、こちら です。
アメリカの消費者物価指数 (CPI) の変化
アメリカの消費者物価指数 (CPI) は、今回のインフレサイクルで初めて 7% を越えた2021年12月以来、以下のように推移してきています。
2021年12月のインフレ率 は、1年間で 7% 📈
2022年1月のインフレ率 は、7.5% 📈
2022年2月のインフレ率 は、7.9% 📈
2022年3月のインフレ率 は、8.5% 📈
2022年4月のインフレ率 は、8.3%、📉
2022年5月のインフレ率 は、再び上昇 8.6% 📈
2022年6月のインフレ率 は、今回のインフレサイクルで最高となる 9.1% 📈
2022年7月のインフレ率 は、8.5% 📉
2022年8月のインフレ率 は、8.3% 📉
2022年9月のインフレ率 は、8.2% 📉
2022年10月のインフレ率 は、7.6% 📉
2022年11月のインフレ率 は、7.1% 📉
2022年12月のインフレ率 は、6.5% 📉
2023年1月のインフレ率 は、6.4% 📉
2023年2月のインフレ率 は、6.0% 📉
2023年3月のインフレ率 は、5.0% 📉
2023年4月のインフレ率 は、4.9% 📉
2023年5月のインフレ率 は、4.0% 📉
2023年6月のインフレ率 は、3.0% 📉
2023年7月のインフレ率 は、3.2% 📈
2023年8月のインフレ率 は、3.7% 📈
2023年9月のインフレ率 は、3.7%
2023年10月のインフレ率 は、3.1% 📉
2023年11月のインフレ率 は、3.1%
2023年12月のインフレ率 は、3.4% 📈
2024年1月のインフレ率 は、3.1% 📉
2024年2月のインフレ率 は、3.2% 📈
2024年3月のインフレ率 は、3.5% 📈
2024年4月のインフレ率 は、3.4% 📉
2024年5月のインフレ率 は、3.3% 📉
2024年6月のインフレ率 は、3.0% 📉
2024年7月のインフレ率 は、2.9% 📉
アメリカのインフレの原因
パンデミック中は、サプライチェーンの問題や、労働者の逼迫、需給のミスマッチなど様々なインフレ要因がありましたが、現在は、それらのほとんどは解消し落ち着いています。
アメリカのインフレはいつまで続くの?と気になるところですが、ウクライナ侵攻に加え、ガザ紛争もあり地政学的なリスクがある現在、やはり最も大きな影響を与えているのが、石油や天然ガスなどのコモディティ価格です。ただ、最近では、石油をはじめとしたコモディティ価格は落ち着いているにもかかわらず、インフレが継続しており、絶好調の株式市場、堅調な労働市場など経済の好景気を背景に、値上げをしても消費意欲の減退があまり見られないことが主要因となっていました。
ただし、そんな状況も少し変わって来ていて、今年の4月前後から全般的に消費が減速しており、そんな影響が労働市場やその他の経済指標にも少し見られるようになって来ています。競争が激しい分野などでは、値下げへのプレッシャーも高まって来ています。
原油価格
原油価格の指標となっている、WTI原油先物は、2023年の年末は $70 以下と2023年の最低価格水準を推移していましたが、その後大きく上下動しながら、現在は 再び$60代後半と今年最低レベルまで下がって来ています。
アメリカの ガソリンの平均価格 は、2024年の年初は、昨年2023年以来最低レベルの $3.08 前後まで下がっていましたが、再び上昇に転じていましたが、現在は、再び下がって来ていて、$3.25 程となっています。
石油価格は、もともと経済の見通し、減産、政治情勢など様々な要因で変化しやすいですが、エネルギー価格が、より安定するためには、ウクライナ侵攻、ガザの紛争などの終結が重要となります。
モノ消費の物価
モノ消費に関しては、一時期高くなっていた感があるオンラインの価格も、セールがとても増え、お得にお買い物ができるようになりました。
目標としている数字は 2%。全体としては達成までにはまだもうしばらく時間がかかりそうです。
高いレベルのCPIの推移により、2023年のソーシャルセキュリティの給付額は、8.7% の大幅アップとなりましたが、2024年は 3.2% アップの調整 (COLA) となりました。2025年は、さらに下がり、2.5%程が予想されています。
パンデミックにより様々な物の需給が急速に変動し、金融緩和によるアセットバブルの状態が続きましたが、利上げがはじまり、株式市場をはじめ、様々な資産の価格も大きく変動しています。インフレ時には、インフレに連動したアメリカ国債、インフレ連動債もあります。I-Saving Bond は、利率が これまでで最高の9.62% となっていましたが、インフレの落ち着きと共に下降してきました。直近の2024年5月から2024年10月末までは、インフレの下落に伴い、利率 4.28% と下がって来ており、条件のいい預金口座やCD、Treasury Bill などと比べると低くなっています。
参考 アメリカの大人気だった I Bonds 2024年5月金利更新
アメリカのインフレによる物価高でずっとショッピングを控えていた人たちも、今年は、狙っていたものが安くお得にお買い物できるチャンスがあると思います。
消費が鈍り始めてきたため、どのお店も大きなセールを開催するモードになってきています。
アメリカでは、お得にお買い物ができる裏技がいっぱいあります。
アメリカのお得にショッピングできるキャンペーンも色々出ています。
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