アメリカ最高裁 物議を醸す判決ラッシュ 中絶の権利 ロー対ウェイド判決50年振りに覆る 銃携帯拡大に続いて

アメリカでは、現在、アメリカ最高裁判所による物議を醸す判決ラッシュが連日続いています。アメリカでは6月は、憲法を争点とするような重要訴訟に対する最高裁判所の判決が多く下される時期なのですが、昨日、今日と2連続で、今までの常識を覆す大変な判決が立て続けに下りています。昨日の判決は、ニューヨーク州の銃の携帯を制限している法律が違法であるという判決が下され、大きな衝撃を与えました。続いて今日は、全米で人工中絶を女性の権利として保障する法律が違法であるという判決が下され、1973年のロー対ウェイド (Roe v. Wade) が覆される判決が発表されました。

アメリカでは、ここ数年、女性の権利を擁護した伝説の最高裁判官 ルーズ・ベイダー・ギンズバーグ さんが亡くなるなど、最高裁判所の判事が大きく入れ替わっています。それにより、これまで均衡を保っていた、保守派とリベラル派のバランスが崩れ、今年は、特に、中絶の権利に関する判決の草案がリークされるなど、重要訴訟の最高裁の判決の行方に注目が集まっていました。

そんな中、妊娠15週目より後の中絶を禁止している、ミシシッピ州の法律は、一般的に認められている、妊娠24週目より短いため、ミシシッピ州の法律を違憲とする訴訟、Dobbs v. Jackson Women’s Health Organization が起こりましたが、判決では6対3で棄却されました。アメリカの中絶に関する法律では、1973年以来、アメリカの中絶に関する権利の拠り所となっていた、ロー対ウェイド (Roe v. Wade) の判決に関しても、5対4で覆され、全米に適用される憲法上の権利ではなく、州の法律を優先するという判決が下されたのです。
アメリカの中絶に関する法律では、1973年のロー対ウェイド (Roe v. Wade) 以来、母体に頼らず独立して生きていけるようになる前、妊娠24週目以前の中絶は、全米で女性の権利として保障されて来ましたが、そんな判決が、約50年振りに覆されることになりました。これからますます州レベルでの法律が重要性を増して来ることになります。

最高裁による女性の権利を制限する判決に、バイデン大統領をはじめ、アメリカ内外で多くの人が、声を上げています。

ニューヨーク州をはじめとしてアメリカ北東部やカリフォルニア州をはじめとしたアメリカ西海岸では、州レベルで、中絶の権利が保障されている一方、テキサス州をはじめとしたアメリカ南部、内陸部では、最高裁の判決が覆り次第、中絶を禁止する法律 (Trigger Law) が施行されることになっている州が実は多くあります。


(pewtrusts.org)

早速、ミズーリ州は、中絶を完全に廃止することを発表しています。

https://twitter.com/AGEricSchmitt/status/1540338042413944832

さらにアメリカの分断が、深まりそうな判決と言えます。
既に、ニューヨークでは、ワシントンスクエアパークなどで大規模なデモが行われています。

昨日は、ニューヨーク州の銃携帯に関する規制を違憲とした訴訟、New York State Rifle & Pistol Assn., Inc. v. Bruen に判決が下されました。
ニューヨーク州では、銃の携帯を制限するために、自宅以外での銃の携帯に関して正当な理由と免許を要求する法律があります。この法律が、アメリカ合衆国憲法修正第14条 (the 14th Amendment)で保障されている個人の権利の一部であり、アメリカ合衆国憲法修正第2条で保障されている「自衛権」を侵害するとして、6対3で違憲判決となりました。

今回の判決を受け、銃撃事件が増えている現在のアメリカで、さらに銃携帯の権利が拡大することになります。
ニューヨークなど人が密集する大都市では、銃携帯不可ゾーンを設定するなど、これまでとは違った法律での対応が必要になります。

最高裁の昨日の判決とは対照的に、今日、上院、下院議会で、バックグランドチェックの強化と、学校での安全性の確保やメンタルヘルスへの支援などを含む、銃規制法案 (PDF) が成立し、今後、大統領がサインをすると成立します。

司法は、独立した存在と言われることもありますが、現実的には、政府や思想が大きく影響していることが、再認識される結果となっています。
ニューヨークでは、女性の権利を擁護した、伝説の最高裁判官、ルーズ・ベイダー・ギンズバーグさんを、今でも市内各地で見ることができます。

ルース・ベイダー・ギンズバーグ ニューヨークのRBGメモリアルスポット

アメリカ最高裁 物議を醸す判決ラッシュ 中絶の権利 ロー対ウェイド判決50年振りに覆る 銃携帯拡大に続いて was last modified: 6月 24th, 2022 by mikissh