Whitney Museum of American Art (34)

大盛況!ホイットニー美術館でメキシコ壁画運動モダンアートの特別展開催中 Vida Americana: Mexican Muralists

Whitney Museum of American Art (34)

ニューヨークのホイットニー美術館では、20世紀前半に大きなアートムーブメントとなった、メキシコ壁画運動をテーマとした特別展が開催されています。展示の中心は、有名なメキシコ3大壁画アーティスト (Los Tres Grandes) の、リベラ (Diego Rivera)、オロスコ (José Clemente Orozco)、シケイロス (David Siqueiros)、女性アーティストの、フリーダ・カーロをはじめ、独特のタッチで、先住民や労働者などメキシコの一般市民を描いた作品や、写真、映像で再現された巨大な壁画です。またそんなメキシコ壁画運動のアーティストたちに大きな影響を受けた、ポロックをはじめとする、アメリカのアーティストの作品も合わせて展示されており、アメリカンアートへのメキシコの影響が見て取れる見応えのある特別展となっていて大盛況でした。

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ニューヨークのミートパッキングディストリクトにある、アメリカンアートのミュージアム、ホイットニー美術館で、2月17日からスタートした新しい特別展が、20世紀前半のメキシコ革命後に隆盛となった、メキシコ壁画運動と、その後のアメリカンアートへの影響をテーマとした、 “Vida Americana: Mexican Muralists Remake American Art, 1925–1945” です。
会場となっているのは、ホイットニー美術館の5階で、リベラ (Diego Rivera)、オロスコ (José Clemente Orozco)、シケイロス (David Siqueiros) を中心に、大きく8つのテーマに分かれ、展示されています。

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Romantic Nationalism and the Mexican Revolution

20世紀初頭の1910年代は、第一次世界大戦やロシア革命が起こったりと激動の時代でしたが、メキシコでも、今から100年程前の1910年から1920年頃にかけて、メキシコ革命が起こりました。それまでの独裁政権が倒れ、市民の声が反映される民主的な新政府が樹立されました。メキシコは、スペインの植民地だったことから、西洋美術のスタイルが主流でしたが、先住民を中心とする一般市民を代表する新スタイルのアートが、新政府により奨励されたことが、その後、独自のスタイルで隆盛となる、メキシコ壁画運動の起源となっていきます。
そんな時代にモチーフの中心となったのが、一般市民でした。日常の何気ない光景から戦いの舞台まで、先住民である自分達が主役であるというナショナリズムを高揚させるような作品の数々が描かれました。こちらは、後に、3大壁画アーティストの一人となる、ディエゴ・リベラ (Diego Rivera) の1928年の作品、Dance in Tehuantepec。オアハカ近郊の町の民族ダンスの様子を描いています。

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ディエゴ・リベラの1931年の花が美しい二作品。花祭りの様子を描いています。

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こちらは、フリーダ・カーロ (Frida Kahlo) の1928年の作品、二人の女性 (Two Women) です。ボストン美術館 からやって来ている作品です。ちなみにフリーダ・カーロは、ディエゴ・リベラ (Diego Rivera) と1929年に結婚し、その後10年間程夫婦でした。

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こちらもフリーダ・カーロの作品。自身をオウムと一緒に描いた1941年の Me and My Porrots。壁画アーティストの男性陣と比べると、より繊細に描かれています。

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3大壁画アーティストと同年代ですが、モチーフなど少し他のアーティストと異なったタイプのアーティストが、アメリカで活躍し、よく知られている、ルフィーノ・タマヨ (Rufino Tamayo)です。タマヨの愛嬌のある絵画作品が、木製彫刻と一緒に飾られています。

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こちらは、Alfredo Ramos Martínez の1929年の作品、ゆりの花売りを描いた Calla Lily Vendor。

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同じく、Alfredo Ramos Martínez の1940年の若い女性を描いた作品。

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こちらは、Alfred Ramos Martinez の1932年作品ですが、ガラリと雰囲気が変わって、軍隊 (Zapatistas) を描いています。思わず目を引かれる独特の作風のアーティストです。

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こちらは、三大壁画アーティストの一人、ホセ・クレメンテ・オロスコ (José Clemente Orozco) が描いた軍隊 (Zapatistas)。同じく1932年に描かれた作品です。

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Orozco on the Coasts

三大壁画アーティストのリベラとオロスコは、大体同年代で、シケイロスは、10歳程年の差があります。3人の中で、アメリカに最初にやって来たのが、オロスコです。大恐慌前から、アメリカで暮らし、1930年には、カリフォルニア州 Clarament にある Pomona College のダイニングホールに、ギリシア神話のプロメテウス(Prometheus) を描いています。今回の展示では、そのレプリカが展示されています。

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オロスコは、西海岸、東海岸と渡り歩き、ダートマス大学 の図書館 (Baker-Berry Library) にも The Epic of American Civilization と題された壁画を残しています。こちらは、その壁画の一部、Gods of the Modern World のスタディです。

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1934年にメキシコに戻ります。こちらもオロスコの作品、1938年に描いた The Fire。とても躍動感があります。

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こちらは、オロスコの1943年の作品で、キリストが、十字架を打ち壊しているというドラマチックなモチーフです。

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アメリカでも活躍したオロスコは、アメリカ人アーティストたちにも影響を与えています。中でも、オロスコに大きな影響を受けたのが、後に、抽象表現主義 (Abstract Expressionism) を代表するアーティストとなる、ジャクソン・ポロック (Jackson Pollock) です。まだ若かったポロックは、Pomona College まで壁画を見に行き、大きな感銘を受けたそうです。こちらは、そんなポロックの初期の1938-41年の作品で、オロスコの作品と雰囲気が似ています。

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オロスコは、他にも様々なアメリカ人アーティストに影響を与えています。こちらは、Charles White の1942年の作品、Hear This。

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Jacob Lawrence が1940-41年に描いた、何枚ものパネルからなる個性的な連作の一部です。

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Siqueiros in Los Angeles

三大壁画アーティストの中で、最年少で、最も政治的に過激なシケイロスが、初めてアメリカを訪れたのは、1932年で、ロサンゼルスで壁画を手掛けました。こちらは、そんな壁画の一作品、ラテンアメリカにおけるアメリカの帝国主義を描いた Tropical America です。反感を買い、すぐに上書きされてしまったようです。こちらは、オリジナルの作品を復元したものですが、実際に色使いは、分からないようで、白黒になっています。

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労働者の母親を描いた1929年のシケイロスの作品、Proletarian Mother。

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Phillip Guston の1937-1938年の作品、Bombardment 。フィラデルフィア美術館 所蔵のスペイン内戦の様子を描いた作品です。

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こちらは、日本出身、アメリカで活躍したアーティスト、Eitaro Ishigaki の1932年の作品、The Bonus March。

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Epic Histories

20世紀前半にアメリカで起こった大事件と言えば、1929年の大恐慌です。経済活動が停滞する中行われた公共事業の一つがアートでした。メキシコ壁画運動にならい、アメリカを活気づけるテーマが描かれました。こちらは メトロポリタン美術館 などでもお馴染みの Thomas Hart Benton による数枚のパネルからなる巨大な作品です。

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Rivera and the New Deal

三大壁画アーティストの一人、リベラが、1931-32年にかけて手掛けたのが、デトロイト美術館の巨大なスペースに、フォードの工場の様子を描くという壁画作品です。

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デトロイト美術館へ訪れたことがありますが、迫力ある、リベラの壁画はやはり特に印象に残っています。

デトロイト美術館 貴重な作品も多い歴史あるミュージアム

Art as Political Activism

アートと言えば、内面的な自己表現、純粋な美の追求といったイメージがありますが、最近では、政治的な目的を持ったものも増えて来ています。実は、大昔は、アートは、自由人が活躍できる数少ない分野で、社会を変革したいという人々もアートに携わることが多く、政治的な目的の作品も多かったようです。
ディエゴ・リベラが、1934年に手掛けたのが、ニューヨークの ロックフェラーセンター の壁画です。”Man at the Crossroads” と題された作品で、資本主義と社会主義を対比するというテーマでした。社会主義者だったリベラは、レーニンを描くという強い意志があったようで、レーニンの削除要請を断ったため、もともとは、30 Rockefeller Center のロビーに飾られる予定でしたが、プロジェクトは中止となってしまいました。そのオリジナルのレプリカの壁画が、Palacio de Bellas Artes に描かれた “Man, Controller of the Universe” で、こちらは、その写真版です。

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こちらは、リベラの助手をしていたリトアニア出身のアメリカ人アーティスト、Ben Shahn の作品。当時、イタリアからの移民が不公正な裁判の判決を受けたことに憤り、描いた作品、The Passion of Sacco and Vanzetti です。

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こちらは、独裁制に強く反対する社会主義者、シケイロスが、反スペインのフランコ政権、反戦をテーマに描いた1938年の作品、Echo of a Scream。一目見たら忘れられない、ぞっとする作品で、シケイロスの代表作の一つです。

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Abelardo L. Rodriguez Market

メキシコには、三大壁画アーティストのものをはじめ数多くの壁画が残されていますが、そんな場所の一つが、Abelardo L. Rodriguez Market(地図) で、今回の特別展では、その様子が映像で紹介されています。Abelardo L. Rodriguez Market は、ディエゴ・リベラがリーダーとなって、リベラの弟子や知り合いのアーティストが参加し、マーケット内に様々な作品が残されています。面白いのが、あの イサム・ノグチ も参加しており、彫刻による壁画が残されています。

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メキシコシティ、グアナフアトなどメキシコ各地には、この他にも三大壁画アーティストのものをはじめ様々な壁画が残されています。例えば、メキシコシティの Castillo de Chapultepec(Museo National de Historia) にあるシケイロスの Del Porfirismo a la Revolucion(ディアス独裁制から革命へ)などもとても迫力のある有名な作品です。

Siqueiros and the Experimental Workshop

シケイロスは、1932年以来、アメリカを何度も訪れており、若手アーティストのためニューヨークでワークショップなども開催しました。そんなワークショップには、オロスコの作品に感銘を受けた、ポロックも参加していました。こちらの作品は、シケイロスが1937年に描いた鏡越しの自画像 (Self-portrait with mirror) です。

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1947年の作品、Our Present Image。シケイロスの作品は他のアーティストにはない独特な迫力を感じる作品ばかりです。

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ポロックの作品、Landscape with steer 1936-37。政治思想だけでなく、モチーフ、描き方などアートのスタイルも革新的だったシケイロスの影響を受けてか、ポロックのスタイルも次第にそれまでの常識にとらわれず、自由になっていったのかもしれません。

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1938-41年の作品、Untitled。その後、1947年から、ポロックならではのスタイルである、ドリップペインティングを確立し、20世紀中頃以降、ニューヨークを中心に世界的に大きな影響を与えたアートムーブメント、抽象表現主義が隆盛となっていきました。こんな風にメキシコ壁画運動という以外な繋がりがあったことに驚きです。

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こちらは、ホイットニー美術館による紹介映像です。

Vida Americana は、2020年5月17日までの開催です。
ホイットニー美術館全般については、こちらで紹介しています。エディブルアート は、終了してしまいましたが、合わせて紹介している、エドワード・ホッパーやジョージア・オキーフなどの作品が見られるホイットニーの1900-1965年のコレクション展、個制定なクラフト展などは、現在も開催されています。

ホイットニー美術館 見どころ満載!絶景ルーフトップも新登場

MoMA では、1930年代からメキシコ壁画運動の特別展が開催しており、フリーダ・カーロ、オロスコ、シケイロスの作品などが常設展で展示されています。

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大盛況!ホイットニー美術館でメキシコ壁画運動モダンアートの特別展開催中 Vida Americana: Mexican Muralists was last modified: 2月 26th, 2020 by mikissh