アメリカのモダンアートからコンテンポラリーアートに特化したニューヨークのホイットニーミュージアムでは、現在、最先端アートの特別展、ホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) が開催されています。昔の教科書通りの教えのアートの価値観を持つ人にとっては、実はこのバイエニアル展は驚愕してしまうようなアート展かもしれません。自由な発想を受け入れることができる人にとっては、新しいものへの挑戦というクリエイティブな活動を目の当たりにでき、大人の遊園地のような刺激的な場所とも言えるかもしれません。
現在のホイットニー美術館の目玉はバイエニアルとなっていますが、ホイットニー美術館の常設展では、例えば、Jasper Johns の THREE FLAGS など、アメリカンアートの名作が数多く展示されています。
現在、ホイットニー美術館の7階と8階には、ホイットニー美術館のコレクションの中からテーマに沿ってセレクトされた作品が展示されています。
7階は、1900年から1960年のアメリカンアートに焦点を当てた、いくつかのテーマに沿った作品をピックアップし展示しています。
例えば、Jazz Age Modernist と呼ばれ、シカゴで活躍した Archibald J. Motley Jr. の作品も展示されていました。アフリカンアメリカンのアーティストでジャズ風な独特の世界を創り出しています。
そう言えば、シカゴ美術館でも彼の作品を見かけ、とても印象的でした。独特な色使いと世界観が一度見たら忘れられません。
こちらの優しい雰囲気の作品は、意外なアーティストでした。エドワード・ホッパー (Edward Hopper) の作品です。他にもたくさん作品が展示されていました。
ロイ・リキテンシュタインらしい作品。ポップなカラーの作品が印象的なアーティストですが、こちらは珍しい白黒の作品です。
8階で先日まで行われていたのが1980年以降の作品からセレクトされた展示です。
先日、サザビーズのオークションで、$100 million 越えで落札され話題となったアーティスト、バスキア (Jean-Michel Basquiat) の作品もありました。
並んであるのは、キース・ヘリング (Keith Haring) で、とても人気でした。
バスキアについてはこちらをどうぞ。
まるでアニメのようにコミカルでユニークなこちらの作品は、ケニー・シャーフ (Kenny Scharf ) さんのものです。
外に出て見ると、エンパイアステートビルやハイラインなど美しいニューヨークの光景が楽しめます。
ホイットニー美術館は、屋外のテラスにもアートがあります。ライトアップで遊んでみたり。
この階まではわりと良く知られた、見慣れたアーティストの作品が並んでいました。
そして、いよいよホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) のフロア、5階、6階へ。最初に目に入ってきた作品はこちら。
ホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) とは、1932年にはじまった、アメリカの最新アートを紹介するというコンセプトの下、数多くの新しいアーティストを発掘してきた長い歴史のあるイベントです。
ホイットニー美術館が新しい建物に移ってきた年、2015年にバイエニアルは開催されましたが、昨年2016年は開催されなかったため、2年ぶりのイベントとなり、3月からスタートしています。
今年のバイエニアルでは、政治的な2極化、人種の対立、格差社会 など現在の社会情勢をテーマにした作品が集められています。
今流行りの VR(バーチャルリアリティ)体験コーナーです。期待を持って並んで体験してみました。毎回同じ作品が見られるのかはわかりませんが、かなり強烈な怖い作品でした。
手前はシュノーケリングをする人々というインパクトのある作品で、気候変動による水面上昇をテーマにしています。
後ろには、大手投資会社である Blackrock が特集された一風変わったグラフの作品があります。アーティスト達の抱える借金の額とマンハッタンのアパートやコンテンポラリーアートの価格などの変化が示されています。アーティストたちが困窮する一方、投資会社やそのCEOが大儲けしているという理不尽な現状を訴えかけている作品のようです。アメリカでは、アーティストを目指す人達に限ったことではないと思いますが、学位の取得をはじめ、かなりの借金を背負っている人が多いようで、そんなアーティスト達の現実が、Debtfair として紹介されています。
世界各国の中央銀行による信用創造 (money creation) のみならず、国によっては株式の買い支えにより、債務(借金)が激増し、資産価格全般に大きな影響を与えています。そんな状況下、現在、仮想通貨もバブル状態の模様。アートマーケットも高騰を続けていますが、多くの場合、恩恵を受けるのはアーティストではなく、投資家やコレクター、ブローカーという所が皮肉な現実だと思います。
自然との融合アートというのか、ライトアップした空間のアート。
館内の階段のところにもアートがぶら下がっています。
ちょっとお化け屋敷みたい。
なかなか人気だったのは、こちらのステンドグラス風アートを背景にしたこちらのカラフルなアート作品。
インスタ映えするキラキラした素材でできたアートで、ミラーにも映り込んで華やかです。
本当に人がボードを持ってそこに並んで立っていると一瞬思ってしまった作品。
お部屋にかかっているのは全て本のページ。本や教科書の検閲もアートに?
イマドキのアートはスマホを通してみるアート。
ホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) の作品群の中で、一番華やかだったのはこれ。ミニチュアのデパートみたいなそれぞれオリジナルのテーマのフロアが並んでいて、それが鏡に映し出されて、摩訶不思議な世界観を作り出していました。みんな思わず覗き込んで見入ってしまうおもしろさがあります。
ホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) に参加できるというのは、アーティストにとっては大チャンス!あまり知られていない新星のアーティストたちの作品披露のチャンスです。
そんな新しいアーティストたちに脚光を当てるホイットニーバイエニアル (Whitney Biennial) は、まるでスタートアップのような雰囲気です。それぞれが自分の情熱、伝えたいメッセージを頼りに、バーチャルリアルティーなどを含め様々な媒体で、創作活動に取り組んでいる様子が伺えます。この中に歴史に名を残すような作品、コンセプトが存在するのか、存在するとしたらどんなアーティストなのか?そんなアーティストたちのエネルギーを感じることができます。また、作品には常に現在が強く反映されるもので、アートとは絶対的なものではなく、様々な社会的なコンテクストの上で成り立っているものであるということもあらためて実感できます。
バイエニアルは、かなり奇抜な作品も多いですが、期間限定で開催されるアメリカの最先端アートの世界を覗きみることができる貴重なイベントです。新しいアイデアや表現に興味がある人はのぞいてみても面白いと思います。
ホイットニービエニアル2017の開催は6月11日までとなっています。
ホイットニー美術館
Whitney Museum of American Art
99 Gansevoort St, New York, NY 10014 地図
ホイットニー美術館とこれまでの様々な特別展の様子はこちらです。美術館のレストランも人気です。
最新のホイットニーバイエニアル2022の様子は、こちらです。
ホイットニーバイエニアル2019は、こちら。