メトロポリタン美術館 ウィンスローホーマー特別展 Crosscurrents 自然や日常を描いたアメリカ19世紀を代表するアーティスト

メトロポリタン美術館では、19世紀のアメリカを代表するアーティスト、ウィンスロー・ホーマー (Winslow Homer) の回顧展、クロスカレント (Crosscurrents) が開催されています。ウィンスロー・ホーマーは、まだ写真が普及する前の19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したアーティストで、よく知られる海のモチーフをはじめ自然の光景、何気ない日常、旅の一コマなどを独特のタッチと色使いで描いたアーティストで、油絵と共に繊細で美しい水彩画の作品も数多く残しています。今回の特別展では、ガルフストリーム (Gulf Stream) など多くの代表作を含め、88点もの作品が大集合し、見応えのある展示となっています。

ニューヨークを代表するミュージアム、メトロポリタン美術館では、常設展だけでも見どころいっぱいですが、様々なテーマの特別展も随時開催されています。そんなメトロポリタン美術館で、2022年4月11日からはじまった新しい特別展が、19世紀後半に活躍したアメリカ人アーティスト、ウィンスロー・ホーマー (Winslow Homer) の特別展、クロスカレント(Crosscurrents) です。会場となっているのは、2階正面左手の特別展用ギャラリー (Gallery 899) で、ウィンスロー・ホーマーの素晴らしいコレクションを誇る、メトロポリタン美術館所蔵の作品をはじめアメリカ各地の美術館などからやって来た88点の作品が展示されています。

ウィンスロー・ホーマーと言えば、写実主義 (Realism) のアーティストで、周囲の自然や日常をその場の雰囲気がよく伝わってくるように描く作風です。海をモチーフとした作品がよく知られていますが、中でも有名なのが、ギャラリーの中心に飾られている、メトロポリタン美術館所蔵のこちらの作品、ガルフストリーム (Gulf Stream) です。

ホーマーは、フロリダやカリブ海の島などをよくバケーションなどで訪れていたようですが、1899年のこちらの作品では、そんな旅の途中の一コマ、メキシコ湾の荒波に揉まれる中、黒人男性が乗った小さな船が、サメに囲まれているドラマチックなシーンが、油絵でとても細かく繊細に描かれています。緊迫したシーンにもかかわらず、どこか穏やかな雰囲気が漂っています。

ホーマーは、油絵だけでなく、水彩画でも有名です。自然の風景をその場で描くため、持ち運びにも便利な絵の具を重宝し、多くの素晴らしい作品を残しています。こちらは、クラーク美術館所蔵、10月の一日 (An October Day) と題された作品で、ニューヨーク周辺、アップステートのアディロンダック山地 (Adirondack Mountains) の景色を、こちらもとても繊細に表現しています。マサチューセッツ州のバークシャー地方にある クラーク美術館 (Clark Art Institute) は、ルノワールのコレクションでよく知られていますが、ウィンスロー・ホーマーのコレクションもとても充実しています。

ウィンスロー・ホーマーは、1836年にボストンで生まれ、リソグラフィーの師匠の下、修行を積み、1857年頃から独立したイラストレーターとして、そしてアーティストとしてのキャリアをスタートしました。その後、1859年にニューヨークに移り、スタジオを構え、アート学校にも通いながら、自学を続けていきます。イラストを描いていた、Harper’s Magazine などから従業員への誘いもありましたが、雇用されることはなく、独立したアーティストとして生涯活動を続けていきます。

1860年代といえば、アメリカは、激動の時代で、奴隷制度をきっかけに南北に分かれて、内戦が行われていました。ウィンスローホーマーのアーティストとしての出発点となったのが、Harper’s により南北戦争の取材で派遣された、アメリカ南部をモチーフとした作品です。現地の状況をイラストで伝える、現在のフォトグラファーに相当するような仕事をしていました。

初期の頃は、そんなアメリカ南部の光景をよく描いています。こちらは、北軍の Sharpshooter の狙撃手が、木の上から狙いを定める様子を描いた、南北戦争中、1863年の作品、Sharpshooter。

戦争の様子だけでなく、南部の何気ない日常の風景も描いています。こちらは、退役軍人が畑で働いている様子を描いた、1865年の作品、The Veteran in a New Field。

こちらは、最前線で捕まった南軍の兵士たちを描いた、1866年の作品、Prisoners from the Front。

アメリカ南部の光景に加え、生まれ故郷であるニューイングランド地方やアップステートニューヨークの光景もよく描いています。こちらは、マサチューセッツ州のビーチでの光景を描いた、1870年の作品、Eagle Head, Manchester, Massachusetts (High Tide)。
ウィンスロー・ホーマーの作品には、よく人物も登場しますが、人そのものが主役というケースは少なく、周囲の景観の雰囲気を伝える全体の構成の中の一部として描かれていることが多いです。

こちらは、子供たちが無邪気に遊んでいる、ノスタルジックな雰囲気のハドソンバレーの光景を描いた、1872年の作品、Snap the Whip。
アメリカでは、イラストレーター出身のアーティストが多いですが、ウィンスロー・ホーマーの作風は、例えば、Edward Hopper、N.C. Wyeth そしてその息子の Andrew Wyeth、Norman Rockwell など、その後、20世紀に活躍した多くの著名アーティストにも影響を与えています。

ウィンスロー・ホーマーは、人種に囚われず、黒人が登場する作品も多く描いています。こちらは、内戦後、労働者として綿花を摘む黒人女性の様子を描いた、1876年の作品、The Cotton Pickers。ロサンゼルスカウンティー美術館所蔵の作品です。

長閑な海辺にあるマサチューセッツ州グロスター (Gloucester) で、波に揺られるボートの景観を描いた爽やかな1876年の作品、Breezing Up (A Fair Wind)。ワシントンDCのナショナルギャラリーからやって来ています。ナショナルギャラリーも、ウィンスロー・ホーマーの素晴らしいコレクションを誇っています。

カーニバルに向けて、ドレスアップする黒人女性と子供たちの様子を描いた1877年の作品、Dressing for the Carnival。

ウィンスロー・ホーマーは、長くニューヨークを拠点に、アメリカ、世界各地を旅していましたが、1883年に、ニューイングランド地方のメイン州に移り、ますます海をモチーフとした作品を描いていきます。
こちらは、海難事故の際の緊迫した救出作業の様子を描いた、1884年の作品、The Life Line。フィラデルフィア美術館 所蔵の作品です。

霧深い独特の海に漕ぎだしている漁師の姿が描かれている、こちらの作品は、1885年に描かれた、The Fog Warning です。ボストン美術館 所蔵の作品です。

こちらのカラフルな1885年の作品は、カリブ海の島、バハマの光景を描いた、Sponge Fishermen, Bahamas です。当時のバハマの主要産業の一つであった、スポンジ作りの場面が描かれています。ウィンスロー・ホーマーは、カリブ海にもよく訪れていて、今回の特別展でもそんな光景を描いた多くの水彩画が展示されています。全般的に暗い色使いのアーティストですが、さすがにカリブ海の島は、明るい色彩で描かれています。

ハドソンリバーの林業の様子を描いた、1892年の水彩画、Hudson River。こちらもボストン美術館所蔵の作品です。

晩年は、メイン州という場所柄もあり、人が登場する作品が減り、自然のみを描く作品が増えていきます。こちらは、キツネ狩りの様子を描いた1893年の作品、The Fox Hunt。雪の中を、ダイナミックに走るキツネと羽を広げるカラスが登場する躍動感のある作品です。日本画でもありそうな構図です。ペンシルベニア美術アカデミー所蔵の作品です。

嵐がやって来た時の磯部の荒波の様子を描いた、臨場感溢れる1895年の作品、Northeaster。

暗雲の中から月光が閃く、ケベック州のサグネ川 (Saguenay River) のケープトリニティの様子を幻想的に描いた1904年の作品、Cape Trinity, Saguenay River, Moonlight。晩年は、より暗い色調で厳しい自然の美しさを表現した作品が多くなっています。

ウィンスロー・ホーマーは、1910年に亡くなりますが、こちらは、その前年の1909年の作品、Right and Left。2羽のホオジロガモ (Common goldeneye) をダイナミック描いています。ワシントンDCのナショナルギャラリーから来ています。

メトロポリタン美術館では、ウィンスロー・ホーマーの特別展に加え、チャールズ・レイの特別展、ファッション展なども開催されています。

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メトロポリタン美術館の常設展も見どころいっぱいです。

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メトロポリタン美術館 ウィンスローホーマー特別展 Crosscurrents 自然や日常を描いたアメリカ19世紀を代表するアーティスト was last modified: 6月 2nd, 2022 by mikissh