今年は、世界で最も知られる20世紀に活躍した近代アートの巨匠、パブロ・ピカソの没後50周年と言うことで、世界各地で様々なピカソの特別展が開催されています。ニューヨークの人気ミュージアム、グッゲンハイム美術館では、20世紀初頭、まだ20歳にもなっていなかったピカソが当時世界の文化の中心地であったパリを訪れ、魅了されたという若い頃の作品をテーマにした特別展、ヤング・ピカソ・イン・パリス (Young Picasso in Paris) が行われています。ピカソらしい作風が形成される前、ピカソが20歳前後だった頃に描かれた10作品程が並ぶ特別展になっています。小さな特別展ですが、ピカソの若いながらにもキラリと光る才能が作品から感じられ、当時の活気溢れるアバンギャルドなパリの様子も伝わって来る面白い展示になっています。
グッゲンハイム美術館は、フランク・ロイド・ライト建築の世界遺産としても知られている、ニューヨークのアッパーイーストサイドにある人気ミュージアムです。現在、夏真っ只中、旅行シーズンの真最中ということもあり、たくさんの旅行者がやって来ています。
グッゲンハイム美術館には、有名な螺旋状のギャラリーをはじめいくつものギャラリーがあり、期間限定で様々な特別展が開催されている他、モネ、ドガ、ゴッホをはじめ印象派・ポスト印象派の著名アーティストの作品の常設展もあります。
そんな常設展ギャラリーの隣の小さなギャラリーでは、ピカソが20歳前後で初めてパリを訪れすっかりパリに魅了されていた頃に描いた作品を集めた、ヤング・ピカソ・イン・パリス (Young Picasso in Paris) 特別展が行われています。
ピカソの作品10点程の小さな特別展ですが、ピカソがまだ若く作風がかたまっていない時期に描いた初めて見る珍しい作品も多く、ピカソ好きの人は特に楽しめると思います。色々なアーティストの影響が感じられる作品も多く面白いです。
ピカソが初めてパリを訪れたのは、国際博覧会 (Exposition Universelle) が開催されていた 1900年の秋で、ピカソはまだ19歳でした。バルセロナの新聞の特派員として、万博を取材すると共に、スペインパビリオンに飾られた自身が描いた作品、Last Moments を見に行く旅でもありました。
ピカソが、当時の世界の文化やアートの中心地であるパリに出会い、すっかり魅了された20歳前後の作品の数々が展示されています。
こちらは、ピカソが1900年11月に描いた、パリへ初めて訪れた時の代表作とも言える、グッゲンハイム美術館所蔵の作品、Le Moulin de la Galette です。Le Moulin de la Galette は、ルノワールの代表作でも描かれているモンマルトルの人気レストランで、ピカソにとっても憧れの場所だったのかもしれません。
ちなみに、万博で展示されたピカソの絵 Last Moments は、現在は存在しません。
実はこちらの絵の下に隠れています。こちらの絵は、1903年に描かれた クリーブランド美術館 所蔵、ピカソの青の時代代表作の一つ、La Vie です。万博で展示されたピカソの絵 Last Moments は、この La Vie の絵の下に残されていることが、X線解析で分かっています。
こちらも最初のパリ訪問時、ピカソ一行が万博を訪れた様子をイラスト風に描いた作品、Leaving the Exposition Universelle 。美しいドレスを身にまとった華やかな女性と可愛いワンちゃんが印象的です。
パリのモンマルトルは、レストラン、カフェ、キャバレーなどの繁華街となっていて、アーティストや文化人が集うアヴァンギャルドの世界が広がっていました。ピカソは、すっかりそんな刺激的な世界の虜になってしまったのでしょう。最初の訪問では、パリに 2ヶ月間程滞在していました。
ピカソの初のパリ訪問にも同行し、この頃、ピカソと行動を共にしていたのが、アーティストであり詩人でもあった親友、カルロス・カセヘマス (Carles Casagemas) です。
カルロス・カセヘマス (Carles Casagemas) は、パリ訪問中に好きな人が出来たのですが、失恋してしまい、ピカソは親友を慰めるため、一緒にスペインに帰国します。
ピカソの親友、カルロス・カセヘマス (Carles Casagemas) は、結局好きな人のことが忘れられず、翌年すぐに再びパリに戻ります。ですが、また振られてしまい自殺してしまいます。親友の死は、ピカソの精神状態に大きな影響を与えることになります。ピカソも、5月に再びパリへ戻り、6月に行われる初の個展での成功に向けて、たくさんの作品を手掛け準備を進めました。
ピカソの心を掴んだのは、ドレスや帽子など豪華な衣装を身にまとった美しい女性たちだったようで、女性が登場するパリの街の風景を多く描いています。
こちらは、再びパリへ戻って来たばかりの1901年5月に描かれた、メトロポリタン美術館 所蔵の作品、Woman in Profile です。
ダイナミックな筆使いと色のセンスが印象的な、Courtesan with Hat。ゴッホやナビ派を彷彿とさせる感じで描いていた作品が多く感じられました。
美しく着飾った楽しそうな女性と無表情の男性のカップルというパリのレストランの光景を描いた、The Diners。
こちらは、当時パリで流行っていた強いお酒、アブサンを飲んでいる女性の姿を描いたスケッチ、Absinthe Drinker。
初めて見かけたバスチーユデーで盛り上がった賑やかなパリの様子を描いた作品、The Fourteenth of July。
ギャラリーには、当時の華やかなパリの雰囲気が感じられる写真なども飾られています。
こちらは、人気ダンスホールの広告の仕事を得ようと自発的に描いた、1901年のポスター作品、Jardin de Paris。ロートレック風に描かれています。
ピカソがパリに来たばかりの貧しい時代に、パリでの生活基盤を確立するため努力していた様子が伺えます。
特別展では、パリをテーマとした作品が多いですが、駆け出しのアーティストだった、ピカソの自画像も展示されています。
表現主義的に描かれた珍しいピカソの自画像です。
初の個展を控え、希望に満ちてパリへやって来ましたが、その後大きな変化も起こらなかった1901年の年末頃に描かれた、青を基調とする暗い自画像です。親友を失ったことに加え、パリで初の個展は開催されましたが、成功とは言えない状況で、貧しい生活が続き、ピカソは鬱になり、その後数年間、青ベースの暗い作品を数多く描く青の時代へと繋がっていきます。
グッゲンハイム美術館のピカソ特別展 Young Picasso in Paris は、8月6日までの開催です。見てみたいという人は、急ぎましょう。
ピカソの若い頃の作品は、バルセロナのピカソ美術館が充実しています。また、以前、パリのオルセー美術館で訪れたピカソの特別展、青の時代とその後のバラ色の時代の展示も豪華な面白い特別展でした。
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パリのピカソ美術館もおすすめです。
螺旋状のメインギャラリーでは、紐や針金を用いた抽象アートで知られる、20世紀に活躍したベネズエラ人女性アーティストである Gego と、同じく日常的なモノを組み合わせて形づくる抽象アートで知られるアメリカ人女性現代アーティスト、Sarah Sze の2人の個性的な抽象アートの特別展が開催されています。
グッゲンハイム美術館への行き方と詳細は、こちらです。
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