ユニオンスクエアの南の方、グリニッジビレッジのエリアに外観の印象的な New University の校舎がいくつかありますが、先日、その中の一つである、ニューヨークのデザイン名門大学パーソンズの建物の前を通りかかりました。その時目に止まったのが、ちょっと奇抜な不思議アートです。何だろう?とミュージアムの中へ入っていってみると、こんなアートが展示されていました。
建物内に入ると、さすがデザイン大学だけあってクールな雰囲気となっています。このギャラリーでは、様々な特別展が行われていて、現在は、“State of the Exception” という特別展が行われています。
たくさんのリュックが壁に貼りつけられています。はじめは、使い古されたリュックを利用したリサイクルがテーマのアートかな、と思いましたが違いました。
このアートに使われているものは全てメキシコからアメリカへ国境を越えてやってきた不法移民達の残していった物だったのです。命がけで国境越えをする移民たちの残していったもので作られたアート。なんて力強いメッセージの作品なのかと驚きました。歴史的にアートはそのものの芸術性だけでなく、様々なメッセージを伝えるためのメディア的役割を担うものでもありましたが、まさにこのアートはメッセージそのものです。トランプ新大統領の登場以降、その前からかもしれませんが、ミュージアムやギャラリーなどでは、社会的なメッセージ性のある、見る人に考えを促すアートがすごく増えてきている感じを受けます。
この “State of the Exception” の作品は、ミシガン大学の人類学研究者のアーティストにより作られたそうです。
小さな子供のリュックから、ボロボロにすり切れたバックパックまで、壁一面を覆いつくすほどのたくさんの数が張り付けられているアート。
移民たちが通った道。
決死の覚悟で不法に国境を超える、そんな苦難の道のりがじわじわと伝わってくる展示で、普段、なかなか考えたことのないような視点にたたされた感じです。
パーソンズのミュージアムのディスプレイはさすがデザイン&アートの大学ということもあり、かっこよくてとてもセンスがいいです。
このパーソンズは、世界的にも有名なファッション大学のひとつです。ニューヨークには有名なファッション大学が二つあり、一つは、NY州立大学のFIT、そしてもうひとつは、私立のパーソンズ (Parsons School of Design) です。以前、FIT のミュージアムを紹介しましたが、パーソンズもギャラリーを無料で一般に開放しています。
パーソンズのアート学科は、エドワード・ホッパー (Edward Hopper) や、ノーマン・ロックウェル (Norman Rockwell)、最近では、先日のアーモリーショーでも作品を見かけた、政治的な活動でも知られている中国のアイ・ウェイウェイ (Ai Weiwei) などの著名なアーティストをはじめ、ファッション学科では、アナ・スイ (Anna Sui) や、マーク・ジェイコブス (Marc Jacobs) 、アレキサンダー・ワン (Alexander Wang)、ダナ・キャラン (Donna Karan)、トム・フォード (Tom Ford)、などの有名なデザイナーを輩出している学校です。
学生たちの様子がちょっと垣間見れました。世界中から生徒たちが集まってくるようでインターナショナルな雰囲気でとても楽しそうです。
基本的には学校なので、中に入るときは学生証で入場するシステムになっていて、入口に警備の人がいます。少し入りにくい雰囲気がありますが、ギャラリーを見に来たと伝えると快く入れてくれるので、近くを通りかかったら覗いてみると面白いと思います。
Parsons School of Design
66 5th Ave, New York, NY 10011 MAP