アメリカ就労ビザが一時停止に 大統領宣言

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アメリカをはじめ世界中に大打撃を与え続けているコロナに加え、人種問題に関する抗議活動、そして11月に迎える大統領選を控え、混乱を極める2020年のアメリカですが、昨晩、就労ビザに関する新たな大統領宣言が出されました。明日、6月24日から今年いっぱい、H-1B、L1、J1 などアメリカで就労可能な非移民ビザの発給、入国を停止することを発表しました。

昨晩、発表されたのが、国外からの就労可能な非移民ビザ保持者の新たな入国を制限する、こちら の大統領宣言 (Proclamation) です。

今回の大統領宣言は、4月22日に発令された、アメリカ国外での新規グリーンカード発給と入国を60日間禁止するとした、以前の 大統領宣言 の対象を拡張、延長する形で、新たに、駐在員のための転勤ビザ L-1 や、専門職の就労ビザ H-1B、それらの配偶者用ビザ、季節労働者用ビザ H-2B、短期の交換プログラム用ビザ J-1 の新規就労ビザ取得者も加わり、年内の受け入れが停止となります。

対象は、アメリカ国外の新規のビザ申請・承認者のみで、既にアメリカ国内にいるビザ保持者、国外でも、既に入国し、パスポートに有効なビザが押されている場合は、対象外です。医療系の専門職や農業従事者などいくつかの特定のケースは、例外扱いとなっています。

新規ビザ発行停止の理由は、コロナにより、現在アメリカでは、失業者が急増中のためです。アメリカの現在の失業率は、10%以上と高いレベルで推移しています。当初は、経済のV字回復を予期していましたが、ウイルスと共存する対策下での生活がしばらく続くということで、復活には、かなり時間がかかりそうという見通しの変更もあると思います。
アメリカでは、様々なコロナ経済対策が行われていますが、ウイルスはまだまだ消え去ることはなく、ゆっくりとした回復となりそうです。

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駐在など L1 ビザによる企業内転勤であれば、社内間で調整し、来年以降に移動時期をずらすことで対応が可能だと思いますが、インドや中国などの H1-B ビザでの採用の場合は雇用が維持されるかどうかも難しくなり色々と大きな影響が出ると思います。アメリカの大学・大学院への留学生に関しては、OPT から H1-B にステイタス変更が可能なので、アメリカ国内の留学生の採用の多い大手企業はそれ程影響はなく、ソフトウェアの人材派遣業を行っているアウトソーシング会社が、大企業の給与レベルと競争できず、アメリカ国外で採用活動を行っている企業などで影響が大きいと思います。

一端、H1-B を取得し、アメリカ内で働き出してしまえば、その後、実質上、転職が可能となるため、人材プールという意味では、広くテクノロジー系会社全般に影響があるといえます。世界各国の在外アメリカ大使館は、パンデミックのためにしばらく閉鎖していて、新規ビザの発給がそもそもあまり行われておらず、現実的には、今すぐそれ程大きな影響はないと思われますが、年内いっぱい続くため、今年、アメリカで仕事のために渡米を予定していた人にとっては、長期的に先が見ない状態となってしまいます。

シリコンバレーをはじめ、テクノロジー系企業などビジネスからは批判の声が上がっています。例えば、こちらは、インド出身のグーグルの CEO、Sundar Pichai さん。

アップルの CEO、Tim Cook さん。

今後、難民申請者への労働ビザの発給禁止や、H-1B のくじ引きによる割り当ての廃止、及び新選考基準をはじめ、移民制度のルールの改革を目指しているようです。

大統領にとっては、パンデミック禍での非常事態宣言中でビジネスへの影響が比較的限定的であることも理解した上で、こういった政策を好む支持層へのパフォーマンス的に行われている側面もあるのかもしれません。しかしこういった閉鎖的なシンボリズム的対応は、長期的には、ビジネス、教育、先端科学など様々な分野において、移民国家であるアメリカのイメージに与える悪影響が心配されます。

アメリカ就労ビザが一時停止に 大統領宣言 was last modified: 6月 23rd, 2020 by mikissh