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エストニア e-Residencyって何?世界中のみんながエストニアのバーチャル住人になれる

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最近、テクノロジーの発展により、世界中の人々と国境を越えて簡単にコミュニケーションが図れるようになってきていますが、その結果、昔と比べて国の概念が希薄になりつつあります。そんな現在を象徴するかのように昨年12月に登場したのが、世界初となるエストニアのe-Residencyという制度です。エストニアは、バルト3国の一つで、フィンランドのヘルシンキからフェリーで渡れるほど近く、私も訪れたことがありますが、その時の印象は、観光を主要産業にしていて、かわいい雑貨などのものづくりを得意とし、中世ヨーロッパの街並みが残る、とにかくとてもかわいらしい印象の国でした。
ところが、実際はエストニアは、テクノロジー系のスタートアップも多く、テクノロジーの先端を行く国のひとつなんです。エストニアは、積極的に国全体の電子化を進めてきたそうで、国内では既にe-Estonianというプラットフォームがあり、国民ID制を基に、国のあらゆるサービスをオンラインで提供しているそうです。そして続いて行われているのは、経済政策の一つでしょう、エストニア人以外でも簡単にエストニアでビジネスを行えるようにバーチャルの住人として登録でき、e-Residentとなれる制度をはじめたそうなのです。今までは実際にエストニアにいかないとe-Residencyカードを受け取れなかったようですが、今後はオンラインで申込みができ、それぞれの国のエストニア大使館で受け取れるようになったようですよ。

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エストニアの首都は、ヘルシンキからフェリーで2-3時間の、ハンザ同盟(バルト海沿岸の商人組合)の都市の一つであったタリンで、街の中心部は歴史地区として世界遺産に登録されています。
このエストニアで有名なテクノロジー会社と言えば、Skypeがあります。一時期ファイルシェアリングで有名だったKazaaや、最近では新しい海外送金の仕組みで注目を集めているTransferWiseなどもエストニア人が創業し、エストニアにゆかりのある会社です。近年、世界で活躍している企業も多く、スタートアップシーンも活気があるようで、e-Residencyでさらにそんなエコシステムを強化しようという経済政策なのでしょう。

おそらく今まで、こんな形の制度を国が率先して実現するなんて想像したこともなく、本当に驚きで、”e-Estonian”の運用実績があっての政策だと思います。e-Residencyは市民権や永住権とは完全に切り離されているようですが、エストニアやユーロ圏のビジネスをリモートで行う場合や、ユーロベースの銀行口座が欲しい人には便利な制度かもしれません。エストニアにおける正式な書類に対する電子署名、会社設立・運営、e-bankingなどが可能になるそうです。

e-Residencyについてまとめられています。

ちなみにエストニアではこんな感じで電子化されているようです。”e-Estonian”のIDナンバーが、生活に必要な全てのこと、例えば銀行口座へのアクセス、会社のシステムへのアクセス、図書館のID、運転免許証、税金、病院、処方箋の受け取り、そして選挙まで、ひとつのスマートIDで全てのことを完結することができるのです。
最近私たちは覚え切れないくらいたくさんのID番号とパスワードを管理しなくてはいけない毎日を送っているので、このIDひとつですべてがこなせるというのはすごい便利で革命的なことに見えます。

日本の教育改革で、中学生に武道やダンスが必修となり、ダンスではヒップホップも取り入れるようになったそうで、リズム感は早いうちから身につけないと身につかないということで、日本では小学生の頃からダンス教室へ通う子も増えたそうですね。
早いうちから身につけさせるという精神は一緒なのですが、エストニアの教育は結構驚きなのです。小学校1年生からコンピューターを学びます。ただ使えるようになるとかのレベルではありませんよ。ロボティックスやモバイルテクノロジーなどを小学校2年生で学ぶんだとか。子供たちの日常に、もちろんコンピューターは当たり前のものになっています。驚いてしまいますが、もしかしたら、それこそが未来を見据えた教育かもしれない?です。

2001年から稼働しているX-Roadという呼ばれるシステムがe-Estonianとe-Residencyの土台となっているそうです。9時-5時のお役所が今やこんな合理的な形で動くようになったのかと思うと感動します。その基本コンセプトはこちらです。

“e-residency”の申し込みについても一応触れておきます(笑)
こちらがe-residency applicationになっています。手数料は50ユーロとのこと。手続きには一か月程かかり、スマートIDが発行されます。現在の所、銀行口座の開設は現地を訪れる必要があるようですが、会社の設立、税金の支払いなど、それ以外は全てリモートで運営できるようです。実際に使えるかはセキュリティー面や税制やその他の制度など詳しくみる必要がありますが、とても面白い試みで、経済的なだけでなくマーケティング効果も大きいと思います。

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日本でもマイナンバー制度がはじまるようですが、税金など自明な部分だけでなく、総合的に利便性のよく考えられた、国民にとって便利な仕組みになっていって欲しいものです。
アメリカもソーシャルセキュリティナンバーがあり、一見統一されていて便利なように見えますが、基本はソーシャルセキュリティ、税金と信用管理のためだけで、あまりユーザーの利便性は考えられていません。フェデラルや、それぞれの州、各々の団体というそれぞれ独立心旺盛な機関の間で、権限、法律が入り組み、それぞれのレベルで電子化は進められていますが、全体をシームレスにするのは簡単なことではないでしょう。スタートアップなど民間のクリエイティブなアイデアに期待せざるをえないかもしれません。
最近世の中がすごいスピードで変化していっています。エストニアのように資源がなく、物理的なリソースのない小国でも独自の戦略によって世界にインパクトを与えることができるようになってきています。これからどんな世界になっていくのか、またなっていくべきかを考えるとわくわくしますね。

2017年、ICOブームの中、国として初となる新仮想通貨の発行(ICO)も考えているようです。

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エストニア e-Residencyって何?世界中のみんながエストニアのバーチャル住人になれる was last modified: 5月 14th, 2018 by mikissh