プラド美術館の見どころ 有名作品 驚異のスペイン王室コレクションを誇るマドリードの大人気国立ミュージアム

Prado Museum (1)

プラド美術館は、スペイン、マドリッドで最も人気があり、世界三大美術館のひとつといわれている美術館です。そんなプラド美術館をテーマにした映画『プラド美術館 驚異のコレクション』がもうすぐ日本で公開されます。スペインは、ハプスブルク家のスペイン王室の下、新大陸に勢力を拡大して、16世紀中盤から17世紀前半にかけて、世界最大の帝国を築き、最盛期を迎えました。プラド美術館は、そんなスペイン王室の15世紀から19世紀前半頃までの膨大なアートコレクションを基に、1819年にオープンした200年以上もの歴史があるミュージアムです。中世ヨーロッパのアートの中心であったルネサンスのイタリア、北方ルネサンスのフランダース地方・オランダ、ドイツなどヨーロッパ各地で活躍した巨匠たちの豪華な作品コレクションからはじまり、次第にスペインがアートの中心地の一つとなっていった時代の作品まで膨大なコレクションがありますが、中でも、スペイン王室の宮廷アーティストとして活躍していた、ベラスケスとゴヤのコレクションは目を見張るものとなっています。

Prado Museum (2)

プラド美術館

プラド美術館は、スペインを代表する国立ミュージアムで、連日、行列ができる、マドリードの大人気美術館です。
プラド美術館の入場チケットは、こちら からオンラインで、時間指定のチケットを購入していきます。チケット料金は EUR15.0 です。

プラド美術館は、1819年に創設されたミュージアムで、当初から、1785年に建てられた歴史的な建物に入っています。西側に面した建物正面には、スペイン一の巨匠とされ、宮廷アーティスト、王家のコレクションのキュレーターでもあった、ベラスケスの像が飾られています。美術館への入口がある北側には、もう一人の宮廷アーティスト、ゴヤの像があります。

Prado Museum (3)

プラド美術館は、マドリードの中心の西側エリア、レティーロ公園の東側で、アトーチャ駅からも近いとても便利なところにあります。プラド美術館の道を挟んだすぐ向かいには、ティッセン=ボルネミッサ美術館 (Museo Nacional Thyssen-Bornemisza) があり、10分程南に歩くと、ソフィア王妃芸術センター (Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía) もあり、周辺は、マドリードの美術館エリアとなっていてミュージアム巡りに最高の場所です。

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プラド美術館 Museo del Prado
Calle de Ruiz de Alarcón, 23, 28014 Madrid, Spain 地図

ベラスケス & ゴヤ スペイン宮廷で活躍した2大巨匠

ベラスケスとゴヤは、プラド美術館の入り口に像が建てられていますが、スペインの宮廷で活躍をした、最も有名な二人のアーティストです。プラド美術館には有名作品がたくさんありますが、この二人の巨匠の作品は中でも見逃すことができない必見作品となります。

スペインのあるイベリア半島は、中世、長期に渡り、イスラム王朝勢力下にありました。ヨーロッパの中心から離れた存在でしたが、次第に小国に分かれながら領土を拡大し、15世紀末、ついに統一したスペイン王国が成立します。
1492年に、イベリア半島からイスラム勢力が駆逐され、レコンキスタを完了すると同時に、スペイン王国に支援を受けたコロンブスが新大陸を発見。その後、新大陸の植民地化により富を得、16世紀後半には、神聖ローマ帝国のハプスブルク家出身の王の下、世界一の帝国を築き上げました。

スペインでは、そんな隆盛に伴って、アートも発展し、ヨーロッパ各地からアートの巨匠たちがスペインを訪問しにやってきます。作品を描きに来るだけでなく、王直属の宮廷アーティストになる者も出てきて、作品を製作すると共に、王のコレクションのアドバイザーにもなっていました。そんな背景から、歴代のスペイン王の好みが強く反映されたコレクションとなっています。

スペインの歴代宮廷アーティストの中で、特に有名なのが、フェリペ4世の下、17世紀中頃に活躍した、ベラスケス、そして、カルロス4世の下、18世紀末前後に活躍した、ゴヤで、プラド美術館には、その両アーティストの作品が数多く展示されています。

プラド美術館の館内は、写真撮影禁止のため、以下作品紹介は、プラド美術館の提供による写真を使って紹介していきます。

ベラスケス

ディエゴ・ベラスケス (Diego Velázquez) は、バロック期の17世紀中頃前後、スペイン宮廷で活躍したアーティストです。ベラスケスは、スペイン南部アンダルシア地方のセビリア出身で、後に、イタリアで過ごした時期もあり、イタリア各地を巡り、イタリア絵画に大きな影響を受けています。中でも、ティツィアーノや、当時のイタリアで隆盛だった、カラヴァッジョの代表される明暗や色使いが特徴的なドラマチックに描く典型的なバロック絵画に影響を受けながら、独自のスタイルを構築し、スペイン黄金時代を代表するアーティストとして、その後の西洋美術に大きな影響を与えています。

ラス・メニーナス

プラド美術館で最も有名な作品が、ベラスケスが、 1656年に描いた、『ラス・メニーナス』です。宮廷アーティストらしいモチーフの作品で、ラス・メニーナスとは、女官たちを意味します。マルガリータ王女を中心に、お世話をする女官、王の家族まで登場する躍動感のある作品です。ベラスケス自身も描かれ絵の中に登場しているのが面白い作品です。後に、次のゴヤの作品をはじめ、多くのアーティストに影響を与えた作品としてもよく知られています。

Las Meninas

王太子バルタサール・カルロス騎馬像

こちらも宮廷アーティストらしい作品です。1635年に描いた、フィリペ4世の唯一の息子、バルタサール・カルロスの騎馬姿を描いた作品『王太子バルタサール・カルロス騎馬像』です。スペイン王室コレクションの基盤となったベネチア派の巨匠、ティツィアーノの作品を彷彿とさせます。

Prince Baltasar Carlos on Horseback

バッカスの勝利

こちらは、1628-1629年頃に描いたとされる、バッカスの勝利 (The Triumph of Bacchus) です。バッカスと言えば、カラヴァッジョが思い浮かびますが、こちらは、ベラスケスがイタリアを訪れる前にフィリペ4世のためにマドリードで描いた作品で、イタリアだけでなく、スペインなどカトリック国に絶大な影響力を誇っていたことが伺えます。当時の王室コレクションに影響を受け、描かれたもので、バロック期ならではのドラマチックな描き方に加え、細部まで細かく丁寧に描かれていて、リアル感のある作品となっています。

The Feast of Bacchus

ブレダの開城

こちらは、1634-1635年頃の作品、ブレダの開城 (The Surrender of Breda) です。16世紀後半から17世紀前半にかけ、長期間に渡り、当時、カトリック国スペインの一部だったオランダの独立のための戦いで、長期に渡り、80年戦争が続いていました。カトリック国とプロテスタント国の長期に渡る戦いの中、スペインは、劣勢でしたが、1625年のブレダの開城は、珍しくスペイン側が勝利した一幕でした。この作品は、その戦いを指揮したにも関わらず、報われることなく失意のうちに死去してしまった、ベラスケスの友人、アンブロジオ・スピノラを讃えて描いた作品です。

The Surrender of Breda(1)

ゴヤ

フランシスコ・デ・ゴヤ (Francisco José de Goya 1746-1828) は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍したロマン派の時代のアーティストです。ゴヤは、スペイン北部のアラゴン地方出身で、イタリアで学び、マドリードに移った後、カルロス4世の宮廷画家となり、プラド美術館には、数多くの作品が残されています。

カルロス4世の家族

ゴヤが、1800‐1801年に描いた、『カルロス4世の家族』は、こちらも宮廷アーティストらしいモチーフで、ベラスケスの影響も強く感じられる作品です。カルロス4世の家族が数多く登場する複雑な構図の作品で、お行儀よく、和やかな柔和な雰囲気ですが、少し離れた感じで、突き放した感じでも描かれています。実はこちらの作品にもゴヤ自身が描かれ登場しています。

The Family of Carlos IV

着衣のマハ・裸のマハ

こちらの上下2作品は、ゴヤが着衣とヌードと同じ構図で女性を描いた作品です。『裸のマハ』が先に、18世紀末頃に描かれ、続いて19世紀初頭頃に『着衣のマハ』が描かれました。ティツィアーノやベラスケスの作品の影響が感じられ、マネのオリンピアをはじめ、その後の印象派アーティストにも多くの影響を与えた作品です。

The Majas

プリンシペ・ピオの丘での虐殺

産業革命が社会に大きな変革をもたらしたこともあり、18世紀末には、世界が動乱期に突入します。フランス革命以降、スペインも次第に混乱期に突入します。こちらは、1808年5月3日に、フランス軍がマドリードで起こしたの事件の様子を描いた、ゴヤの『プリンシペ・ピオの丘での虐殺』です。

The 3rd of May 1808 in Madrid, or “The Executions”

我が子を食らうサトゥルヌス

ゴヤは、晩年、戦争や混乱の荒波に飲みこまれたこともあり、それまでとは全然違ったダークな雰囲気の作品も残しています。こちらは、そんな時期を代表する作品の一つで、1819-1823年頃、ローマ神話の一シーンを描いた、『我が子を食らうサトゥルヌス』(Saturn Devouring His Son) です。

Saturn

プラド美術館の有名作品

プラド美術館は、コロナ休館から再開後の現在、通常の半分以下のスペースとなる、中央のメインギャラリーなど一部のギャラリーのみの公開となっており、プラド美術館を代表する作品を集めた、Reunited と題した特別展が、2020年9月13日まで開催中です。

通常は、本館には、グランドフロア(0階)とフィーストフロア(1階)の2フロア、さらに、セカンドフロア(2階)にも少しだけ常設展ギャラリーがあり、別館には、特別展用ギャラリーや、コートヤード (Jerónimos Courtyard) があります。有名作品が集まっているのは、グランドフロア(0階)とフィーストフロア(1階)の2フロアです。

プラド美術館のコレクションのもとになっているのは、かつて、世界最大の帝国を築いた時代もあったスペイン帝国の王室、特にフィリペ4世のコレクションです。特に、スペイン王の宮廷アーティストであった、ベラスケスとゴヤの素晴らしいコレクションが有名ですが、同時に、歴代スペイン王によって収集された、ルネサンス以降の15世紀から19世紀初頭にかけてヨーロッパ各地で活躍していた巨匠たちがスペインを訪れて制作した作品の数々も多く揃っています。ベラスケスとゴヤ以外では、ボス、ティツィアーノ、エルグレコ、ルーベンスらの作品に関しても世界最大のコレクションを誇ります。以下、時代順にプラド美術館の有名作品を紹介します。

フラ・アンジェリコ

西洋美術を発展させてきたのは、キリスト教による宗教絵画です。中世までは、フレスコ画やモザイクのビザンチン美術が主流でしたが、14世紀頃からイタリアのフィレンツェなどを中心にルネサンス期がスタートし新しいスタイルが生まれてきて、次第に、美術の世界でも、より人間味溢れるスタイルの作品が生み出されるようになっていきます。

当時の一番のパトロンは、カトリックであったこともあり、アーティストは、修道士だった人も多かったようです。フラ・アンジェリコ (Fra Angelico 1395-1455) も、フィレンツェのサンマルコ修道院の修道士で、15世紀中頃に活躍した修道士のアーティストでした。

フラ・アンジェリコ (Fra Angelico) の1435年頃の作品『受胎告知』です。サンマルコ修道院にも同じモチーフの作品がありますが、この作品ももともとは、サンマルコ修道院に描かれたものでした。

La Anunciación

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン 十字架降架

15世紀にヨーロッパでアートが盛んだったのが、ルネサンスのイタリアと北方ルネサンスのフランダース・オランダです。北方ルネサンスの初期、15世紀前半に活躍した、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン (Rogier van der Weyden 1400-1464) は、この時代の最も有名なアーティストとして知られる、ヤン・ファン・エイク (Jan van Eyck) と並んで良く知られている、ファン・エイクより10歳程年下のアーティストです。ちなみにファン・エイクと言えば、今年、史上最大の特別展が、ベルギーのゲントで開催されていましたが、コロナのため、途中で中断となってしまいましたが、こちらで見ることができます。

こちらの作品は、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの1438年頃の作品、『十字架降架』 (The Descent from the Cross) です。ウェイデンは、イタリアを訪れたこともあり、ヤン・ファン・エイクらフランダース派のスタイルとルネサンスのスタイルが混ざり合ったような作風で、躍動感溢れた作品です。

The Descent from the Cross

ボス 快楽の園

『快楽の園』(The Garden of Earthly Delights Triptych) は、16世紀初頭に描かれたものですが、20世紀に隆盛となったシューレアリスムのような謎めいた印象に残る作品です。作者は、北方ルネサンスの初期オランダ絵画のアーティスト、ヒエロニムス・ボス (Hieronymus Bosch 1450-1516) です。ヒエロニムス・ボスに関しても、プラド美術館は、最大のコレクションを誇っています。20世紀に隆盛となった、ミロやダリに代表されるシューレアリスムにも影響を与えたと思われます。

The Garden of Earthly Delights Triptych

アルブレヒト・デューラー

こちらは、神聖ローマ帝国の中心だったドイツで活躍し、北方ルネサンスで最も有名なアーティストの一人であった、アルブレヒト・デューラー (Albrecht Dürer 1471-1528) が、1498年頃描いた『自画像』です。イタリアへ何度も訪れており、ラファエロやダヴィンチとも交流があったのではないかとされていて、イタリアのルネサンス絵画にも影響を受けています。プラド美術館には、この他、有名なデューラーの『アダムとイブ』の作品もあります。

Autorretrato

プラド・モナリザ

モナリザと言えば、レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれたルーヴル美術館の『モナリザ』が有名ですが、実は、プラド美術館にも『モナリザ』があります。この作品は、ダヴィンチが、現在、ルーヴル美術館にある作品を手掛けていた時に、同時に、ダヴィンチのものを模写し、ダヴィンチの工房の弟子の Salaì または、Francesco Melzi によって描かれたものではないか、とされています。

The Mona Lisa

ラファエロ ラ・ペルラ

こちらは、ベラスケスが仕えたフィリペ4世のお気に入りの作品で、『ラ・ペルラ』(The Pearl) と呼ばれている『聖家族』(The Holy Family) を描いた作品です。ラファエロ (Raphael 1483-1520) と工房の弟子によって1518年頃に描かれた、ダヴィンチの雰囲気が漂う作品です。

The Holy Family, or ‘The Pearl’

ティツィアーノ カール五世騎馬像

こちらは、ラファエロらルネサンスの最盛期のアーティストに影響を受けた、ベネチア派の巨匠、ティツィアーノ (Titian 1490-1576) が、1548年に描いた『カール5世の騎馬像』です。カール5世は、ハプスブルク家の出身で、神聖ローマ帝国のローマ皇帝であり、さらに、スペイン国王を兼任した人物で、スペイン王としては、「カルロス1世」と呼ばれています。ティツィアーノは、王家がパトロンとなり、カール5世、その後、スペイン王となるフィリペ2世も数多く描いており、後のアーティストにも大きな影響を与えました。プラド美術館には、ティツィアーノの作品が数多くあり、ティツィアーノに続いたベネチア派のティントレットやヴェロネーゼの作品も色々あります。

Emperor Charles V at Mühlberg

ヨアヒム・パティニール

こちらの作品も、ヒエロニムス・ボスの作品同様、不思議な世界が描かれています。フランダース地方で活躍したヨアヒム・パティニール(Joachim Patinir 1480-1524) の1515–1524年頃の作品、ギリシア神話の世界を描いた『ステュクス川を渡るカロン』(Landscape with Charon Crossing the Styx) です。

Charon crossing the Styx

ブリューゲル

こちらは、後のオランダ絵画の黄金時代のアーティストたちに大きな影響を与えた、オランダ絵画の巨匠、ピーテル・ブリューゲル (Pieter Bruegel the Elder 1525-1569) の作品、死の勝利 (The Triumph of Death) です。ペストの大流行を受け、その無力感を表現したモチーフがこの頃よく描かれていたようですが、こちらはそんなモチーフをブリューゲルなりに表現し直した作品です。たくさんの人が登場する複雑な構図を遠近法を用いて生き生きと描いており、教会や王侯貴族がパトロンの中心だった当時、一般市民を描いた稀なアーティストです。農民も多く描いており、ニューヨークのメトロポリタン美術館の収穫 (The Harvesters) もブリューゲルの代表作の一つです。

The Triumph of Death

エルグレコ

こちらは、スペインのトレドで活躍したアーティスト、エル・グレコ (El Greco 1541-1614) の1577–1579年頃の作品、『聖三位一体』 (The Holy Trinity) です。エルグレコは、エルグレコ=ギリシア人という意味の名前からも分かるようにギリシア出身ですが、イタリアで絵画を学び、その後、繁栄を極めたスペインのトレドへ移ってきて活躍した、スペイン絵画初期の代表的なアーティストとして知られています。

The Holy Trinity

プラド美術館には、エルグレコの作品が数多くあります。『胸に手を置く騎士』『聖霊降臨』『羊飼いの礼拝』『受胎告知』なども必見。

ルーベンス 三美神

こちらは、ピーテル・パウル・ルーベンス (Peter Paul Rubens 1577-1640) の1630–35年頃の作品、『三美神』(The Three Graces)。
ルーベンスは、スペイン統治下のフランダース地方出身のアーティストで、イタリア、スペイン、イギリスなどヨーロッパ各国を外交官として訪れ活躍したアーティストです。スペインのフェリペ4世、イングランド王チャールズ1世からナイトの称号を与えられ、多才で信頼の厚い人物でした。
アントワープでは、大規模な工房を営み、数多くの作品を残しており、プラド美術館にもたくさんの作品が展示されています。ルネサンスの巨匠、ベネチア派から大きな影響を受けたバロック期を代表するアーティストで、後のアーティストたちにも多大な影響を与えた人物です。ルーベンスに続いた、アンソニー・ヴァン・ダイクの作品も多くあります。

The Three Graces

リベラ

こちらは、スペイン出身で、イタリアに移り、ローマやナポリで活躍したアーティスト、ホセ・デ・リベーラ (José de Ribera 1591-1652) の1639年の作品、『聖フィリップの殉教』(The Martyrdom of Saint Philip) です。当時ローマを席巻したカラヴァッジョの影響を感じさせる、イタリアバロック期のアーティストで、後のスペイン絵画にも影響を与えています。

The Martyrdom of Saint Philip

フランシスコ・デ・スルバラン

こちらは、フランシスコ・デ・スルバラン (Francisco de Zurbarán 1598-1664) が、1635–1640年頃に描いた、ラテン語で神の子羊を意味する、『アグヌスデイ』(Agnus Dei) です。バロック期らしく、明暗法 (キアロスクーロ) が印象的なアーティストで、キリスト教に関するモチーフをドラマチックに描いた作品を多く残しています。スペインからアメリカに移民してきた人々の間でも人気だったのか、アメリカ各地の美術館でもよく見かけるアーティストです。

Agnus Dei

レンブラント アルテミシア

王家に仕えたルーベンスやベラスケスと対照的なのが、オランダ東インド会社が栄えた頃、商人や市民を描いたオランダ黄金時代を代表する巨匠、レンブラント(Rembrandt 1606-1669) です。こちらは、レンブラントが、1634年に描いた旧約聖書に登場するユディットを描いた作品 (Judith at the Banquet of Holofernes)
、通称『アルテミシア』 (Artemisia) です。明暗が印象的なバロック期らしい作品です。

Judit en el banquete de Holofernes (antes Artemisa)

ムリリョ 無原罪の御宿り

17世紀スペイン絵画黄金時代に活躍したアーティスト、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ (Bartolomé Esteban Murillo 1617-1682) の1678年頃の作品、『無原罪の御宿り』(The Immaculate Conception of Los Venerables)。ムリーリョがいくつもの作品を残している、得意なモチーフです。

The Immaculate Conception of Los Venerables

ティエポロ

18世紀になると、フィリペ4世の息子、カルロス2世で、スペイン・ハプスブルク家が、断絶し、フランス出身のブルボン家が、スペイン王室を継承し、次第に、ロココ調に代表される、フランスの影響が色濃くなっていきます。
そんなロココ期の代表的アーティストの一人が、イタリア出身のアーティスト、ティエポロ (Giovanni Battista Tiepolo) です。晩年、スペインで活躍し、1767-1769年頃、マドリードで、ムリリョらによって描かれたスペインらしいモチーフの作品、『無原罪の御宿り』(The Immaculate Conception) を描いています。ティエポロと言ったら、たくさんの天使が舞っているロココ調の印象もありますが、スペイン王室コレクションを見てか、ムリリョらの作品に影響を受けた感じの作品となっています。

The Immaculate Conception (2)

常設展の他、様々なテーマの特別展も随時開催されています。2019年に、プラド美術館を訪れた時には、16世紀中頃のスペインとオランダで活躍した、ベラスケス、レンブラント、フェルメールを対比した豪華な特別展が開催されていました。展示の様子は、こちら の映像で紹介されています。
館内には、いくつかカフェがあり、特別展ギャラリーの上階にあるコートヤード (Jerónimos Courtyard) で、ちょっとした軽食とドリンクを頂けます。ケーキとコーヒーで休憩しました。

Prado Museum (4)

プラド美術館見学後は、ミュージアムショップでお土産ショッピング。特別展用の入口、Jerónimos Entrance の正面に、ギフトショップがあります。

Prado Museum (5)

スペインでは、マドリード発でたくさん美しい街を回ってきました。おすすめの旅行先です。

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プラド美術館の見どころ 有名作品 驚異のスペイン王室コレクションを誇るマドリードの大人気国立ミュージアム was last modified: 4月 21st, 2024 by mikissh