ニューヨークの現代ヒスパニックアート美術館 エルムセオデルバリオで破壊アート ラファエル・モンタネス・オルティス 回顧展

ニューヨークのヒスパニック系コンテンポラリーアート美術館、エル・ムセオ・デル・バリオ (El Museo Del Barrio) では、現在、ニューヨークで活動する現代アーティストでミュージアムの創設者の一人でもある、ラファエル・モンタネス・オルティス (Raphael Montañez Ortiz) の回顧展が開催されています。ラファエル・モンタネス・オルティスさんは、様々な社会的運動やカウンターカルチャーが盛んになった激動の1960年代に隆盛となった破壊の中に美しさを見出し、モノを破壊するというパフォーミングアート的要素も加わった破壊アートで知られるアーティストで、ピアノが無残にも壊された作品など一風変わった作品の数々が展示されています。

エル・ムセオ・デル・バリオ (El Museo Del Barrio) は、セントラルパークの東側に隣接した五番街沿い、スパニッシュハーレムとも呼ばれるイーストハーレムにある、ラテン系アートに特化した現代アート美術館で、様々な期間限定の特別展が開催されています。

エル・ムセオ・デル・バリオで、現在開催されているのが、現代アーティストで、ミュージアムの創設者でもある、ラファエル・モンタネス・オルティス (Raphael Montañez Ortiz) の回顧展、Raphael Montañez Ortiz – A Contextual Retrospective です。ラファエル・モンタネス・オルティスさんは、1934年にブルックリンで生まれ、プエルトリコ、メキシコ、先住民など多様なヒスパニック文化の背景を持った現役アーティストで、長年、ニュージャージーの州立大学、ラトガース大学の教授も務めていました。

ラファエル・モンタネス・オルティスさんといえば、みんなの前でピアノを破壊するというパフォーミングアートでよく知られたアーティストで、社会運動やカウンターカルチャーが盛んになった60年代頃に隆盛となった破壊アートの代表的なアーティストの一人です。オノヨーコさんの有名な服を切り刻むという1964年の参加型パフォーミングアート、Cut Piece と通じるものがあります。

20世紀中頃、第二次世界大戦後のアートは、トラウマ的な暗いトーンの抽象的な作品が多い印象がありますが、ラファエル・モンタネス・オルティスさんの作品もそんな雰囲気を醸し出している破壊が作風の中心となっています。見事に壊され、スクラップされたソファが、ある種美しい抽象アートのソフトな彫刻のようにずらりと並べられています。こちらは、1961年から65年にかけて手掛けた、ソファ、マットレス、椅子などを破壊することにより制作した、”Archaeological Finds” シリーズの作品です。

木製で、綿や金属のワイヤーからなるソファが、見事に破壊され、抽象アートに変身しています。ディアビーコン をはじめ様々な美術館に展示されている、金属のスクラップアートでよく知られる、John Chamberlain さんの家具版のような印象です。

破壊アートの彫刻だけでなく、金属の彫刻、映像、写真など作品など様々なメディアの作品を手掛けています。

絵画的な作品もあります。

無数の靴が土に埋まっている面白い作品。バルセロナで活動したスペイン人現代アーティスト、Antoni Tàpies の作風を彷彿とさせます。

ラファエル・モンタネス・オルティスさんの最も有名なシリーズと言えば、ピアノを破壊するコンサート “Piano Destruction Concert” シリーズです。ロンドンで1966年に開催された、破壊系アーティストのグループ展、Destruction in Art Symposium で披露されて以来、様々な場所で行われていました。

そんな破壊されたピアノの一部が、見事に保存され、壊された直後のように展示されています。どうやって保存し、再び再現しているのか気になるところです。

こちらも壊れた鍵盤です。

初期の頃は、暗い色合いの作品が多かったですが、次第に明るい作品も登場していきます。マヤ文明のピラミッドをかたどった、2体のカラフルな彫刻、Maya Zemi と題された作品。周囲には、他のヒスパニック系現代アーティストの作品も展示されています。

Ritual Potlatc と題された、カラフルかつコミカルなポップアート風に描かれた破壊アートの作品です。

こちらは、ヒスパニック文化に大きな破壊をもたらした植民地時代をテーマとし、2019‐2020年にかけて制作された新作です。ラファエル・モンタネス・オルティス (Raphael Montañez Ortiz) さんは、現在、88歳ですが、まだまだ現役アーティストです。

1階の別ギャラリーでも展示が行われています。広々としたギャラリーでは、映像作品が展示されている他、ポスター風の作品も展示されています。

現在、デジタルアートはすっかり隆盛となっていますが、ラファエル・モンタネス・オルティスさんは、1990年代から手掛けていたようで、そんな作品も展示されています。

ラファエル・モンタネス・オルティスさんの回顧展は、2022年9月11日までの開催です。エルムセオデルバリオは、木曜日から日曜日までの開館で、現在、Pay-What-You-Wish 制になっています。

エル・ムセオ・デル・バリオ (El Museo Del Barrio) では、3年に一度開催される、ヒスパニック系アートのグループ展、La Trienial など様々な特別展が開催されています。

エル・ムセオ・デル・バリオ ニューヨークを代表する ラティンクス美術館の現代アートグループ展 ESTAMOS BIEN – LA TRIENAL

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