アメリカでは、最近、何気ない単語やメッセージがクールなタイポグラフィで描かれたTシャツやトートバッグなどが流行していてよく見かけるようになっています。そんな言葉のメッセージが主役のデザインの元祖とも言えるアーティストの一人が、アメリカ西海岸を拠点に活動しているポップアートで知られるベテランコンテンポラリーアーティスト、エド・ルシェイ (Ed Ruscha) です。現在、ニューヨークのモマでは、エド・ルシェイの特別展、ED RUSCHA / NOW THEN が開催されていて、200点以上もの作品が展示されています。OOF、SPAM など短いけれど、インパクトのある言葉が主役となる作品や、20th Century Fox や Hollywood などの広告やポスターの作品など、どこかで見たことがある有名作品が色々と登場する、大人気の特別展となっています。
ニューヨークを代表する近現代美術館、MoMA の最上階、6階にある特別展ギャラリーでは、西海岸を代表するポップアートのコンテンポラリーアーティスト、エド・ルシェイ (Ed Ruscha) の回顧展、ED RUSCHA / NOW THEN が2024年1月13日まで開催されています。
エド・ルシェイは、アメリカ東海岸で活躍したアンディ・ウォーホルや、ロイ・リキテンスタインらと共に 1960年代頃に隆盛となった、ポップアートムーブメントで知られるグラフィックデザイナー出身のアーティストで、現在、86歳となっています。短いながらインパクトのある言葉を主役にしたポスターのような作品や、建物や風景などアメリカらしい光景の作品を絵画、印刷、写真、本、映像など様々な媒体で手掛けています。
エド・ルシェイは、ネブラスカ出身ですが、オクラホマで育ちました。ロサンゼルスで美術学校に通い、その後、ロサンゼルスを拠点に活動しています。若い頃には、オクラホマとロサンゼルスを車で何度も行き来し、その時の何気ない光景を作品に残しています。20世紀前半に産業化したアメリカの光景を精密に描いた Charles Sheeler らの作品を彷彿とさせるこちらの美しいスタンダードのガソリンスタンドは、エド・ルシェイの代表作の一つです。
エド・ルシェイは、ウォーホル、リキテンスタイン同様、商業アート出身で、言葉を中心としてタイポグラフィにもこだわったポスターのような作品を数多く描いています。
スパム缶やアメリカの名作コミック、アニーなど広く知られる題材をもとに、内容ではなく敢えて言葉を中心にした作品に仕上げています。
Noise という単語と共に壊れた鉛筆とコミックが描かれたコミカルな作品、 Pencil, Broken Pencil, Cheap Western です。
面白いタイポグラフィの作品も色々あります。作品の中での文字の位置を考えるなど、ポスターやサムネイルなどのデザインをしたことがある人は、より楽しめる特別展だと思います。
タイポグラフィの一部として絵を登場させたり、
タイポグラフィに空を描いたり、文字へのこだわりが強く感じられます。
エド・ルシェイと言えば、短い単語の作品が思い浮かびますが、メッセージ的な作品も色々展示されています。よくトートバッグに描かれていそうな文言で面白いです。
絵画や印刷だけでなく写真をベースにした作品も色々展示されています。中には、展示会のポスターの作品もあります。
エド・ルシェイは、1970年にアメリカ代表として、ベネチアビエナーレ (Venice Biennale) に参加し、その時に制作したのが、なんとチョコレートが塗られた部屋でした。そんなチョコレートルーム (Chocolate Room) が MoMAに再現されています。当たり前で誰もが知っている日常的なモチーフを、構図、媒体、塗料に工夫を凝らし、印象に残る作品に仕上げてしまうクリエイティブなアーティストです。塗料では、チョコレートの他、メープルシロップ、そして驚いたことに、血まで試してみるような実験的なアーティストです。
21世紀以降は、社会的なメッセージ性のある作品も描くようになっています。環境汚染を彷彿とさせる古い化学工場を描いた 2003年の作品、The Old Tech-Chem Building。
最後には、これまでの作品とは少し雰囲気の異なる、2017年に描いた壊れ行くアメリカ国旗を描いた作品が飾られています。
ED RUSCHA / NOW THEN は、来週の土曜日、2024年1月13日までの開催(メンバーは1月15日まで)なので、見てみたいという人は、急ぎましょう。
こちらの映像では、ED RUSCHAについて分かりやすく紹介されています。
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