ニューヨークのアッパーイーストサイドにある、近未来的な曲線フォームで一際目立つ建物となっている、グッゲンハイム美術館 では、今月からスイス人の著名アーティスト、ジャコメッティ (Giacometti) の特別展がはじまりました。作品を一目見ただけで、どのアーティストの作品か多くの人がすぐ思い浮かべることができるというのが、一流アーティストの特徴でもありますが、まさにジャコメッティはそんなアーティストの一人です。一目でジャコメッティのものだと分かる究極なまでに削ぎ落された個性的な彫刻が、グッゲンハイム美術館の美しいらせん状に続く展示スペースにずらりと並んでいて、まるで仏像のような神聖な雰囲気のオーラを漂わせています。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館で、今月、6月8日からスタートしたのが、個性的な彫刻作品を数多く手がけた、世界で知られるスイス人アーティスト Alberto Giacometti の特別展 “Giacometti” です。20世紀前半、当時のアートの中心だったパリで活躍したアーティストで、1920-30年代に流行した現実のような非現実の不思議な世界を表現したシューレアリズムの流れを汲んでいますが、すっかり独自の世界を切り開いた彫刻家で、現在、最も高額で取引されている彫刻家の一人となっています。
ジャコメッティの最もよく知られるモチーフである人間の全体像の他、顔をモチーフとした作品も数多く見られます。こうして見てみると、少し モディリアーニ のような雰囲気が感じられます。ヨーロッパ列強の植民地だったアフリカやオセアニアからヨーロッパへと伝わったエキゾチックな遺品は、当時のアーティストたちに大きな影響を与えたようです。
ジャコメッティの顔の彫刻がずらりと並ぶ圧巻な展示です。数多くの仏像がずらっと並んだ日本のお寺が思い浮かびます。
こちらは犬の彫刻。ジャコメッティというと作品の中心は、人が多いと思いますが、こんな風に動物の作品も時々あります。
鼻が伸びてしまったピノキオの物語を作品にしたような面白い彫刻です。中心となる像の他、周りの枠部分にもこだわりのある作品です。
ジャコメッティが創作する人物像は、細くて愛嬌のある動きが表現されていて、見る人の心をつかみます。
そして、本当に今にも動き出しそうな表現力です。
巨大な車輪の台車の上におなじみの細い人間が立っているダイナミックな作品、Chariot。
彫刻の他、スケッチなども展示されていて、製作過程の様子が垣間みられます。
こういうスケッチ画があの彫刻作品へと変身していきます。
人の細かな表情をよく表現している作品が多いです。
顔だけから、上半身まで表現するようになりました。
途中、ジャコメッティの作品の製作の様子が分かる映像も上映されています。こんな風に彫刻作品が出来上がっていきます。
製作過程の映像です。
グッゲンハイム美術館のジャコメッティ展は、2018年9月12日までの開催となっています。
先日、6月21日に、ジャコメッティが活躍したフランスのパリで、ジャコメッティの人生と作品を紹介する新しいミュージアム Giacometti Institute がオープンしました。ジャコメッティのアトリエなどが見学できるようです。ジャコメッティのファンは、パリへの旅行で訪れてみるといいと思います。
グッゲンハイム美術館では、ジャコメッティ展の他、”One Hand Clapping” と題された中国のコンテンポラリーアートの特別展も行われています。何人かのアーティストたちの作品が集められた展示ですが、全体的にメルヘンチックな不思議感あふれる世界が作り出されています。キャンディーが散らばっているように見えるこんなアートも。
メルヘンな物語を連想させるアートがいっぱいです。
にんじんがにょきにょきと動き出しそうな作品。
真っ青なフロアの空間に生け花作品が点在する、不思議だけど絵になる世界が作り出されていました。
ヴァーチャルリアリティ体験コーナーもあります。
現在、ジャコメッティ展を中心とした構成で、グッゲンハイム美術館の得意とする抽象アートの作品はあまり展示されていませんが、その他、ブランクーシの展示、そしてモネやピカソなど印象派から20世紀前半のモダンアートの常設展もあり、見応えがあります。