アメリカには、様々なアメリカ特有の鳥がいますが、中には、面白い鳥も色々います。ニューヨークでよく見かける面白い鳥というと、色々な鳥の鳴き声や猫の鳴き声の真似がとても上手な「ものまね鳥」がいます。その面白いモノマネ鳥は、日本語では、マネシツグミ (Northern Mockingbird) と呼ばれている、アメリカの「モッキンバード」という鳥です。マネシツグミは、いつもシリアスな顔をしていますが、アメリカの小説など、例えば、アラバマ物語 (To Kill a Mockingbird) などにも登場し、昔からアメリカで親しまれている鳥です。一羽いるだけでたくさんの種類の鳥に囲まれている気分になる程、上手に他の鳥たちの歌を取り入れ、美しいメドレーを歌い上げます。猫の鳴き声が上手な鳥は、キャットバードと呼ばれている、ネコマネドリ (Gray Catbird) です。可愛い顔をした鳥で、その名の通り、本当に「ニャー」(Meow) という猫のような鳴き声を上げ、美しい歌も奏でます。
パンデミックで生活が激変して、今まで全く意識しなかったような身の回りの色々なことに気づくようになりました。何気ない日常の生活の中で得られた新しい発見の一つが、たくさんの鳥たちの存在と、鳥たちの鳴き声です。お昼間はもちろん、夜遅くまで、鳥たちは元気に鳴き声を上げているのですが、信じられないことに、今まで忙しい生活の中で、鳥の鳴き声すら聞こえていなかったのです。意外と意識しないと聞こえないものなのかもしれません。
それぞれの鳥が独特の鳴き声や歌を奏でますが、そんな鳥たちの中でも特に面白いのが、他の鳥たちの鳴き声を真似る、マネシツグミ、モッキンバード (Northern Mockingbird) です。虫の他ベリーなど様々なものを食べ、都市部にも適応し、ニューヨーク周辺にも数多く生息しています。低い木の枝にとまっていることが多く、元気に様々な種類の鳥の鳴き真似メドレーを披露しています。数百種もの鳥の鳴き真似ができるようで、一羽いるだけで、たくさんの種類の鳥に囲まれている気分になります。初春から夏にかけての繁殖期と秋によく歌い、パートナーを惹きつけるのと、テリトリー宣言の意味合いがあるようです。お昼だけでなく、夜遅くまでずっと鳴き続けている、モッキンバードがいたら、その子は、パートナーをまだ探しているモッキンバードです。
コマツグミ (American Robin)、ショウジョウコウカンチョウ (Northern Cardinal)、アオカケス (Blue Jay)、スズメ (House Sparrow) など、ニューヨークでよく見かけるお馴染みの鳥たちをはじめ、キツツキ、タカ、カモメなど多種多様なフレーズが入り混じった面白いマネシツグミの歌は、こちらです。
マネシツグミは、美しい鳴き真似メドレーを聞かせてくれる可愛い鳥として、かつて人気のペットだったそうです。アメリカで、長年親しまれて来た鳥で、フロリダ、テキサス、アーカンソー、ミシシッピ、テネシーの5州の州鳥となっている他、歌や小説、映画などにもよく登場しています。
1960年に出版され、ピューリッツァー賞を受賞し、ベストセラーとなり、映画にもなった名作、アラバマ物語 (To Kill a Mockingbird) では、モッキンバードは、小説の題名にもなっています。アラバマ物語は、人種差別が根強く残るアメリカ南部で、容疑をかけられた黒人青年の事件を担当する弁護士のお話ですが、お話の中で、モッキンバードは、人に対して悪いことはしないよ、美しい歌声を聞かせてくれる可愛い鳥だから、殺しちゃだめだよ。という、映画のシーン(映像)もあります。
モッキンバードと同じく、ものまねが得意なアメリカ大陸固有のマネシツグミ科 (Mimidae) の鳥が、ネコマネドリと呼ばれる、グレイキャットバード (Gray Catbird) です。猫のような鳴き声が得意で有名ですが、他にも、短いフレーズを組み合わせた美しい歌声を聞かせてくれます。キャットバードも、他の鳥の鳴き声を自分の鳴き声の一部に取り入れて鳴くのですが、モッキンバードのように分かりやすくはありません。ニューヨークでよく見かける鳥なので是非みつけてみてください。
グレイキャットバードは、森や公園の中の木々が生い茂った場所にいます。かなりすばしこく、動き回っていますが、時々、葉がいっぱいの木の枝にとまって、美しい鳴き声を奏でています。
この他、ニューヨーク周辺では、あまり頻繁には見かけませんが、チャイロツグミモドキ (Brown thrasher) という鳥もマネシツグミ科の鳥で、他の鳥の鳴き声を真似するのが得意です。マネシツグミは、その日の気分で気まぐれに歌っているので、それぞれの鳥の鳴き声を何回づつ入れるかなど決まっておらず、フレーズ数が変化しますが、チャイロツグミモドキは、規則正しく2フレーズづつメドレーを奏でます。チャイロツグミモドキは、なんと最大数千種類ものレパートリーがあるそうです。
日本語でアオカケスと呼ばれる青く美しい鳥、ブルージェイ (Blue Jay) は、よくフクロウの近くで、騒がしく鳴いていますが、Red-shouldered Hawk や Red-tailed Hawk など、タカやワシ、フクロウなどの鳴き真似をすることがあります。
世界を見渡してみると、さらに驚きのものまね鳥がいます。オーストラリアの東海岸に生息するという、コトドリ (Lyrebird) は、鳥だけでなく周囲のあらゆる音を真似することができるようで、なんとカメラのシャッター音や、チェーンソーの音までレパートリーに入っています。
こちらの映像では、コトドリの素晴らしいものまね能力が紹介されています。
アメリカには、羽が折れたふりをして、卵やヒナを守るという驚きの習性を持った鳥もいます。最近もよく見かけますが、ピーピー元気に鳴いているとても可愛らしい鳥です。