今年は世界中で新型コロナが大流行し、多くの犠牲者が出て、人々の日常を激変させる、歴史的な年となりました。ニューヨークは、コロナ危機で、トラウマ的な状況を経験することになりましたが、そんなニューヨークの忘れられないトラウマ体験といえば、2001年9月11日にアメリカ各地で同時多発テロが起きた911事件です。ワールドトレードセンタービルのツインタワーが崩壊し、多くの犠牲者を出しました。そんな911事件の悲惨さと多くの人の活躍を今に伝える、911メモリアルミュージアム(国立9月11日記念博物館)も、今年3月以降、長期間の閉鎖が続いていましたが、記念日となる9月11日から関係者への公開を再開し、9月12日からは一般公開も始まり、ミュージアム見学が再開となりました。
911事件後、再開発されたワールドトレードセンターは、ニューヨークで最も高いビルとして知られている、ワンワールドトレードセンターをはじめ、いくつもの新高層ビルにより成り立っており、その新ビルが完成し今美しく変身を遂げていますが、その中心に存在するのが、かつてワールドトレードセンターのツインビル跡に建設された、911メモリアルと、911事件の詳細を今に伝える、 911メモリアルミュージアム(国立9月11日記念博物館)です。911メモリアルも、再開後は、ウィズコロナ対策で、マスクの着用が必須となり、敷地の周囲が囲われて、入り口と出口が別々の分かれたところに決められてあり、人の流れがコントロールされ順路ができあがっています。
アウトドアの911メモリアルは、ミュージアムより一足早く、7月初旬から再開していて訪問できるようになっていました。
以前は、ほとんど人がいませんでしたが、今はだいぶ人が増えて賑わって来ています。毎年9月11日にはセレモニーが行われ、その後は、たくさんのお花が飾られていますが、今年は、パンデミック中で、旅行制限などもあることから、例年より少なくなっていました。
夏に、911メモリアルを訪れた時の様子はこんな感じでした。
そして、911メモリアルミュージアムも、ついに 9月12日から一般公開が再開しました。他のミュージアム同様、コロナ対策下でのリオープンで、マスク着用の他、25%以下の入館者数制限がされているため 時間指定チケットの事前購入 が必須になります。ただし、シティパス や ニューヨークパス などの観光パスの利用者は、予約なしでそのまま訪問可能となっています。
ミュージアムへの入口は、911メモリアルの敷地に入り、ミュージアムの建物をぐるりと反時計回りに回った場所にあります。現地ではスタッフが目を配ってくれているので、親切に教えてくれると思います。
911メモリアルミュージアムは、館内に入ってすぐ、空港のような感じのセキュリティチェックがあります。ギャラリーは地下に広がっています。
911メモリアルミュージアムで見どころの一つとなっているのが、旧ワールドトレードセンタービルの遺構の巨大構造物です。館内のあちらこちらに色々な形で点在しています。
エスカレーターで到着するフロアがギャラリーのスタート地点になります。トイレやミュージアムショップもこのフロアにあります。
イントロ部分の展示からスタートです。ウィズコロナの中という事で、ミュージアム内のあちらこちらにハンドサニタイザーが点在していて、ソーシャルディスタンスが守られ、ギャラリー内を一方通行制にしたりしているため、見逃したものがあった時には、後ろに戻れず、もう一度一周したりなんてこともありましたが、安心して、そして今まで以上にゆったりと見学できるミュージアム体験となりました。
様々な人々が登場するデジタルの展示。来館者も全員しっかりとマスクを着用しています。
なだらかな坂を下って行くと、全体を見渡すことができる展望スポットがあります。
途中、色々な展示を見学しながら進んで行くと、
さらに階段またはエスカレーターでさらに下の階へと続いていきます。ここには、サバイバーズ・ステアズ (Survivors Stairs) と呼ばれる、完全に壊れることなく生き残ったかつての階段があります。
メインのギャラリーとなっているのが、地上から20メートル程下にある地下2階で、かつてワールドトレードセンタービルの北棟と南棟があった、現在の911メモリアルの真下となっています。
真っ白なオキュラスを連想させる911の改造バイクなどが展示されていますが、このミュージアムには、遺族から寄贈された、故人を偲んだ様々な記念の品々が展示されています。こういった品々は今もずっと寄付され続けているので、ひさしぶりに訪れて見ると、新しい展示が増えていたりします。
ニューヨークの街角の消防署に時々、アメリカの国旗がはためくようなアメリカらしい、そしてニューヨークのシンボルが描かれているようなニューヨークらしい絵が描かれている所があります。そんな消防署のひとつです。
無残に曲がってしまった、かつての鉄骨の遺構部分が、まるで彫刻のような感じで展示されています。日系アメリカ人建築家、Minoru Yamasaki さんがデザインした、旧ワールドトレードセンタービルの北棟は、完成前後の1971年から1973年までの間、世界一の高さを誇り、2001年までニューヨーク一高い高層ビルでした。ハドソン川の近くの水が滲み出して来るような難しい立地の中での建設で、そんな当時の様子も紹介されています。
911事件で活躍したのは、消防士ら救急の人達だけではなく、たくさんのワンちゃんたちも活躍しました。そんな救急で活躍した犬たちの写真展、K-9 Courage が開催されています。
In Memoriam と題された、多くの犠牲者の方たちの写真が飾られたギャラリーがあります。そのギャラリーの中央では、音声により何人かの犠牲者の方たちについて詳しく紹介されています。In Memoriam のエリアは、写真撮影は禁止となっています。ワールドトレードセンターのテロ事件というと、2001年が最も知られていますが、実は、それ以前1993年にも爆破事件が起こっており、そちらの事件の犠牲者も一緒に祀られています。
In Memoriam のホール近くの広場では、ローマの詩人、Virgil の “No Day Shall Erase You From the Memory of Time.” というメッセージと共に、2001年9月11日の空の色をテーマに、様々な色彩の青のタイルが敷き詰められた感じのアート作品があります。実は、こちらはタイルではなく、水彩画で出来ているという、Spencer Finch さんの作品です。
ミュージアムの最大の見どころとなっているのが、事件当日のタイムラインと、背景、消防士さんなど救急の人々の活躍など911事件に関する様々なテーマが、遺品と共に展示されている見応えのある展示、September 11, 2001 です。こちらのギャラリー内も、写真撮影禁止になっています。911事件後、オサマ・ビン・ラディンを追い詰めていった過程を紹介した Revealed: The Hunt for Bin Laden と題された特別展は、ギャラリーが小さいため閉鎖されていますが、オンライン でその様子が公開されています。ギャラリー前の通路には、破壊された当時の消防車や尖塔部分などが展示されています。
ギャラリーの最後に広がっているのが、ファウンデーションホール (Foundation Hall) と呼ばれる広場です。存在感のある旧ワールドトレードセンターの西側にあった巨大な壁が印象的な広大なスペースで、当時のリカバリー作業の最後に取り除かれた鉄骨をはじめ様々な遺構や遺品が展示されています。ファウンデーションホールの北側から東側へと続く通路には、911時の光景の写真が色々と飾られています。
ミュージアムショップには、Tシャツ、トートバッグ、マグカップなどの定番商品の他、マスクもあります。ミュージアムショップでは、お土産で色々なマスクが登場するかなと思っていましたが他では意外と見かけません。
911メモリアルミュージアムの基本情報と見どころは、こちらで紹介しています。
911事件で崩壊し再建工事が始められていた、ギリシア正教の教会、St. Nicholas National Shrine も、しばらく工事が滞っていましたが、今建設が再開されています。
911メモリアルの南側には、のんびりと過ごせる公園、リバティパークもあります。
911メモリアルの隣の小高い丘にあるリバティパークは、こんな公園です。
今年のトリビュートインライトも、とても美しく幻想的な光景になっていました。