ニューヨークを代表する現代美術館、ニューミュージアム (New Museum) では、先日からニューヨークのハーレム出身、アフリカ系アメリカ人アーティスト、フェイス・リングゴールド (Faith Ringgold) の特別展、Faith Ringgold: American People がはじまりました。フェイス・リングゴールド (Faith Ringgold) さんは、ハーレム生まれで、ニューヨーク、アメリカの様々な社会的なムーブメントを体験して来たアーティストで、アクティビストとしても知られています。独特のカラフルな色使いで、日常や社会的なテーマを、絵画や、ソフトスカルプチャー、絵本のようなストーリーキルトなど、様々な媒体で描いています。今回の展示では、リンゴールドさんの生涯に渡る様々な作品が登場し、回顧展のような豪華なラインアップになっています。特別展が始まったばかりですが、早速たくさんの人がやって来ていて活気に溢れていました。
ニューヨークのロウアーイーストサイドにある、ニューミュージアム (New Museum) は、ニューヨークを代表するコンテンポラリーアートの美術館の一つで、世界各国の様々な現代アーティストをフィーチャーした特別展が期間限定で開催されています。
ニューミュージアムがあるのは、日本の建築ファーム、SAANA がデザインした面白い形の建物です。今後、拡大を予定しており、隣接した場所に新館が登場する計画となっています。
1階奥のギャラリーでは、とても存在感のある、土と草花が印象的な巨大なインストレーションアート、Daniel Lie: Unnamed Entities の展示が行われています。アメリカでは、室内で楽しめる観葉植物が今大人気となっていますが、アート作品にもそんな自然をテーマとしたものが増えています。
2階から4階までの3フロアに渡って開催されているのが、2022年2月17日からはじまったばかりの注目の特別展、Faith Ringgold: American People です。
フェイス・リングゴールド (Faith Ringgold) は、ジャズの黄金時代である、ハーレムルネサンス期の 1930年に、ニューヨークのハーレムで生まれたアフリカ系アメリカ人女性で、現在91歳のベテランアーティストです。1960年代前後の公民権運動、フェミニストのアクティビストとしても知られ、University of California San Diego で教授を務めていました。アフリカ系アメリカ人に影響力のあるアーティストで、最近では、ブランドとのコラボなどでも見かけるようになっています。
昨年、ニューヨーク植物園で特別展が開催されていた 草間彌生 さんとほぼ同世代のアーティストです。
2階のギャラリーの入口に飾られているこちらの作品は、1965年に描かれた自画像です。
最もよく知られた作品の一つが、今回の特別展の題名にもなっている American People シリーズの作品の一つ、死 (American People Series #20: Die) です。公民権運動が盛んだった1967年に描かれた作品です。ゴッホやルソーら、MoMA の最も有名な作品が集まっている4階のギャラリーに、ピカソの作品と共に飾られていて、とても存在感のある作品なので、見たことがあるという人も多いと思います。
こちらもアメリカの人々シリーズの作品の一つ、1967年に描かれた、血を流す旗 (American People Series #18: The Flag is Bleeding)。
他にも、独特のスタイルで、アメリカの人々を描いた American People シリーズの絵画の数々が、ずらりと並べられています。
American People シリーズに続いて、1969年から手掛けた、幾何学模様が特徴の Black Light シリーズの作品群も合わせて飾られています。
Black Light シリーズは、オレンジ、青、藍色、茶色など統一感のある暗目の色使いが特徴で、抽象絵画で知られる、Ad Reinhardt に影響を受けて描いた作品群です。
こちらは、For the Women’s House と題された壁画で、1972年に、ライカーズ島 (Rikers Island) にある、ニューヨークの刑務所を描いた作品です。作品保護上の理由から刑務所から取り外されたこちらの作品は、今後、ブルックリン美術館に展示される予定となっています。ちなみに、ライカーズ島 (Rikers Island) といえば、ネットフリックスの新ドラマ、実在したインフルエンサーのドラマ Inventing Anna で舞台になっていたところです。
公民権運動などアクティビストとしての活動の様子も展示されています。
政治的なポスターの数々。一番よく知られている作品は、右側のアメリカの地図を赤、緑、黒で描いた The United States of Attica と題された作品です。
絵画からスタートしたリングゴールドですが、1970年代には、次第に、キルトや布などを使用したソフトスカルプチャーに移行して行きます。こちらは、家族の中の女性像を描いた、Family of Women シリーズの作品です。
1972年のSlave Rape シリーズ。
3、4階では、1970年代後半以降、フェイス・リングゴールドのシグネチャースタイルとなった、アメリカの伝統工芸の一つ、キルトにイラストと物語を描いた、ストーリーキルトの作品の数々が展示されています。
3階には、喪服姿など黒いドレスを身にまとった女性のソフトスカルプチャーが飾られています。
こちらは、1980年代後半、女性を橋を描いた、Woman on a Bridge シリーズ。左側は、Tar Beach と題された作品で、子供の頃、ジョージ・ワシントンブリッジが見えるハーレムのタウンハウスの屋上で過ごした思い出が描かれています。Tar Beach は絵本にもなっています。
1990年代後半、アメリカの光景を描いた、アメリカンコレクション (American Collection) の作品群。
1997年の作品、We Came To America には、自由の女神 も登場。We Came To America も絵本になっています。
フロアを移動する階段の途中にも、手作り感溢れるソフトスカルプチャーが展示されています。
広いギャラリー一室のみの4階には、ずらりと大きなストーリーキルト作品が並べられています。
ここで展示されているのは、フレンチコレクション (French Collection) と呼ばれる、フランスをテーマとし、黒人女性の視点で描いた12作品からなるシリーズです。20世紀初頭にパリに引っ越した黒人女性という設定の架空の女性、Willia Marie Simone を主人公に、シーンと共にストーリーが描かれています。
こちらでは、ルーヴル美術館 の様子を描いていて、有名なモナリザをはじめ レオナルド・ダ・ヴィンチ の作品群が登場しています。
こちらは、モネ、ゴッホ、マティスのお馴染みの作品が描かれていて、みんなに大人気です。
最上階には、フェイス・リングゴールドの絵本が色々置かれています。
ニューミュージアムを訪れたときには、この美しいニューヨークの景観をみるのもおすすめです。
ニューミュージアムの基本情報は、こちらでも詳しく紹介しています。