ワシントンDC で今密かな人気となっているのが、国際スパイ博物館 (International Spy Museum) です!
ワシントンDCは、アメリカの政治の中心地で、国会、最高裁判所、ホワイトハウス、連邦政府各組織のヘッドクオーター、世界各国の大使館など、国内外の重要機関が集合しているすごい街です。様々な思惑が渦巻く街、ワシントンDCは、近年人気のスパイドラマにもよく登場しますが、現実世界でもスパイや諜報機関が暗躍する都市なのです。2019年に、ワシントンDC内で移転し、新しく巨大になった、国際スパイ博物館 (International Spy Museum) では、そんな知られざるスパイの世界に触れることができます。
アメリカでは、2010年代、ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ (The Americans) や ホームランド (Homeland) などスパイをテーマとしたドラマシリーズが人気となりましたが、現実に目を向けてみると、直近では、アメリカによるイランの国外秘密工作組織、イラン革命防衛隊 (IRGC) のコッズ部隊 (Quds Force) の長、スレイマニ司令官の殺害、元日産CEO、カルロス・ゴーンの日本国外脱出など、スパイドラマさながらの事件が現実でも色々起こり騒がれています。そんな中、そんな知られざるスパイの世界をテーマとしたワシントンDCの博物館、インターナショナルスパイミュージアム(国際スパイ博物館)が人気となっているのです。国際スパイ博物館は、もともとは、2002年にワシントンDCにオープンし、ペンクオーター (Penn Quarter) のスミソニアンポートレートギャラリーの前にあったミュージアムなのですが、2019年5月に、ナショナルモールの南側にある L’Enfant Plaza に移転し、新しく巨大になって再オープンしています。
チケット購入後、エレベーターで、まず最上階の5階へ向かいます。到着しエレベーターから出ると、早速、スパイの世界に引き込まれて行きますが、ここではまず最初に、カードが手渡され、スパイとしてのカバーアイデンティティを取得します。スパイとしての名前、出身地、職業、ミッションを与えられます。私は東京出身のスパイ
で、アムステルダムへのミッションを与えられました。アンダーカバーミッションのための秘密のコードを覚えたら出発です。
まずは、ブリーフィング劇場で、スパイとは?を学んでいきます。スパイの歴史などスパイの全体像を紹介した作品が上映されます。
ブリーフィング映像が終了すると、次に待っているのは展示フロアです。展示フロアでは、スパイ用IDカードをかざし、インタラクティブなアクティビティを色々体験できます。
ドイツ、フランスの二重スパイとして、パリで活躍した女スパイのマタ・ハリ、旧ソ連のスパイ、Dmitri Bystrolyotov、デンマーク人で元イスラム武装グループで、後にデンマークのスパイとなった Morten Storm、17世紀末、エリザベス女王下で活躍したスパイ、Francis Walsingham ら歴史上の著名なスパイたちが詳しく紹介されています。
監視するための道具、情報収集するための道具、変装グッズ、逃亡のためのもしものグッズなどスパイ活動にまつわる様々な道具が紹介されています。
今一緒にいるその人は本当に信頼できる人?お互いが信じあっていたら万々歳、でもどちらかが相手のことを信じていないこともあり得ます。お互いの信頼度を知る体験型の面白いコーナーもあります。
見えない脅威をどうやって検知するか、など様々な興味深いトピックのコーナーが色々あります。
安全に情報を伝達するために使われた重要なものといったら「暗号」です。文字を置き換えた暗号や、15世紀に発明され、その後、数世紀間に渡り、暗号の定番だったアルベルティの暗号円盤から、ナチスドイツが使用した暗号機のエニグマ、エニグマの暗号を解読したチューリングなど、暗号技術の歴史について紹介されています。
ケネディとフルシチョフが対立したキューバ危機など20世紀の重大事件も紹介されています。
こちらは、オバマ大統領下、オサマ・ビン・ラディンの殺害を実行した際のデシジョンルームの様子を体験できるコーナーです。ここぞという暗殺のチャンスが今目の前にあり、緊迫した状況の中、暗殺のゴーサインを出すか出さないか判断しなければなりません。数少ない判断材料しかなく、100パーセントの確信が持てない中で、こんな風に実行されるんだと結構驚きます。
スパイの一例として、日本の忍者も登場していました。
情報戦では、プロパガンダも重要な武器となります。物事は常に見方によって色々な側面があるので、特に、フェイクニュースや様々な意図を持った情報が溢れる現在、多方面からの視点を持ちつつ、自分なりの考えを持つことがより大切になってきています。
1978年にロンドンで起こった、毒殺事件に使われた傘です。ブルガリアン・アンブレラ (Bulgarian umbrella) と呼ばれる傘で、この傘に毒薬が仕込まれ、ブルガリア人ジャーナリスト、Georgi Markov が暗殺されるという事件がありました。
展示は、4階に続いていきます。4階の一つ目のコーナーでは、歴史に大きな影響を与えたスパイ活動 (Spying That Shaped History) というテーマの下、トップシークレット、サイバー、第二次世界大戦中のスパイ活動、大失策など様々な切り口から紹介されています。
当時世界最強だったイギリス軍を破ったアメリカ独立戦争における、ジョージ・ワシントン率いるアメリカ軍の勝利も、地の利を生かしたスパイ活動による所が大きかったようです。
現在のスパイ活動でますます重要度を増している、デジタルの世界についても詳しく紹介されています。アメリカ国家安全保障局 (NSA)、Wannacry などで知られるサイバー犯罪グループ、Lazarus などが、美しい映像と共に紹介されています。
ポップカルチャー、テレビや映画でスパイをテーマとしている作品の紹介コーナーもあります。スパイものというと、例えば、イギリスの MI6 という設定のジェームズ・ボンドの007シリーズ、最近では、2011年からスタートした CIA が登場する Homeland (初回予告編)、2013年から2018年まで続いた、旧ソ連のKGB が登場する The Americans (初回予告編) などが思い浮かびます。ちなみに、Homeland の最終シリーズとなるシーズン8は、今年、2020年2月からはじまります。予告編映像は こちら です。こういうドラマや映画のファンたちも楽しめるミュージアムです。
冷戦時代のベルリンのホテル Palasthotel も紹介されていました。東西に分かれた冷戦時代の最前線だっただけに、スパイ活動も盛んで、なかなか衝撃的だったのですが、徹底的にお客さんの様子を監視していたホテルもあったようです。冷戦下のベルリンのセクションでは、当時、街の地下にあったという秘密のトンネルなども展示されています。
最後は、2フロアの展示の中、様々なアクティビティを通して、スパイとしての成果が判定されます。姿からして、三人とも本当にスパイのようです。
スパイミュージアムの見学終了後は、1階のスパイミュージアムショップに立ち寄ります。
さすがスパイのミュージアムショップという感じで、売っているものが面白いです。盗難防止の工夫がされたリュックなどアイデア商品の他、可愛いスパイのクマさんなど色々なスパイ関連グッズがあります。
国際スパイ博物館は、歴史好き、スパイのドラマや映画好きにおすすめです。国際スパイ博物館の見学所要時間は、1時間半から2時間程で、それぞれのペースでゆっくりと全体を見て回ることができるミュージアムです。
ワシントンDCのスパイミュージアム
国際スパイ博物館(インターナショナル スパイ ミュージアム)
International Spy Museum
700 L’Enfant Plaza SW, Washington, DC 20024 地図
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