ニューヨークのダウンタウン、シティホールや市庁舎、各種裁判所など様々な公的機関が集合する、シビックセンター (Civic Center) にある公園、コレクトポンドパーク (Collect Pond Park) に、一昨日 10月13日に、メドゥーサ像が登場しました。メディーサは、ペルセウスの頭を持った凄みのある表情をしていて、一見すると古典西洋美術の典型的なモチーフである、ギリシア神話の一場面のような感じです。何が特別なの？どこが面白いの？と集まってきた人たちで話していましたが、このメデゥーサ像は、今ニューヨークで話題になっている新パブリックアートで、一目見ようと結構人々がやってきていました。
ニューヨークのシビックセンター (Civic Center) には、シティホールや市庁舎の他、連邦政府のニューヨーク州南部の裁判所があったり、ニューヨーク州の最高裁判所があり、歴史ある新古典主義建築の建物が林立しています。シビックセンターの中心に位置する Foley Square には、20世紀末らしいパブリックアート、Triumph of the Human Spirit が飾られています。
メドゥーサ像が登場した、コレクトポンドパーク (Collect Pond Park) は、Foley Square から少し北側、カナルストリート方面に行った所にある小さな公園で、目の前には、ニューヨークの刑事裁判所 (New York County Criminal Court) があります。一昨日、10月13日に公開されたばかりの話題の新パブリックアートという事もあり、意外と多くの人が見にやって来ていました。
こちらが、新登場のペルセウスの首を持ったメデューサ像です。イタリア系アルゼンチン人アーティスト、Luciano Garbati さんの作品で、新作なのかと思えば、実は、2008年に制作されたという彫刻です。著名映画プロデューサーだった、Harvey Weinstein が、今春、ニューヨークの裁判所で性犯罪者として有罪になったことは記憶に新しいですが、そんな有力者の性犯罪を明らかにした、#MeToo 運動の象徴として登場しています。
ギリシア神話をよく知っている人は、あれ逆なのでは？と思う人もいると思いますが、実はこちらの作品は、敢えて立場を逆転させた構成になっています。フィレンツェの中心、シニョーリア広場の柱廊に飾られている、Benvenuto Cellini 作の16世紀の彫刻、メディーサの首を持った、ペルセウス像 (Perseus With the Head of Medusa) にあるように神話上は、ゼウスの息子であるペルセウスが、怪物であるメディーサを成敗したことになっています。
こちらは、ウフィツィ美術館 所蔵、カラバッジョが描いたメディーサですが、頭髪は蛇で、宝石のような目を持ち、見たものを石に変えてしまう能力を持っています。ヨーロッパでは、かつて、魔除けの効果があると信じられ、多くのメディーサをモチーフとした作品が描かれたようです。
メディーサが右手に持っているのは、ペルセウスの首ですが、神話上、メディーサを怪物にしたのはアテナで、その原因と言えば、海神のポセイドンとの関係で、#MeToo ムーブメントでは、メディーサは被害者として捉えられています。#MeToo を前提に制作されていない作品が、#MeToo の象徴として転用され、直接、関係のないペルセウスをやっつけた姿の像には、批判の声も上がっています。
偶然立ち寄った人は、古典西洋美術風だけど趣が感じられず、現代アート風のスピンがないと感じてしまうかもしれませんが、古来のナレーティブであるギリシア神話と現在の社会の関係性、共通性に思いを馳せてみると面白いかもしれません。メデューサ像 は、2021年4月30日まで展示されます。
Collect Pond Park
130 Leonard St, New York, NY 10013 地図
バッテリパークのお隣、ワグナーパークには、移民の守護聖人とされる、マザーカブリニ (Mother Cabrini)、セントラルパークには、女性の権利向上に貢献した歴史的な女性の偉人像が登場していたりと、ニューヨークには、女性像がどんどん増えて来ています。ニューヨーク州知事のクオモさんは、今日、先日、亡くなられた人気者最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)の像をブルックリンに建てることを発表しています。
