ニューヨーク、ロウアーマンハッタンのニューヨーク証券取引所の近くにある、フィナンシャルディストリクトの象徴、牛の像「チャージングブル」は、いつも旅行者でいっぱいになるニューヨークの大人気写真スポットです。
ウォールストリートや、ブロードウェイエリアのニューヨークのロウアーマンハッタンは、通常平日はオフィスワーカーの人でいっぱいになります。
ブロードウェイを南下して行くと登場するのが、ニューヨークの金融街のアイコンとなっている「チャージングブル」です。旅行者に人気の写真撮影スポットで、いつも人で溢れかえっています。
ウォールストリートがこんなに閑散としていた瞬間は、コロナ中のロックダウンの時がはじめてかもしれません。あまりに珍しい光景なので、たまたま通りかかったトラックの運転手さんが、思わずトラックを止めて下りてきて、急いで写真撮影をしていたのを覚えています。
チャージングブルとは?
チャージングブルとは、1987年10月に起こったブラックマンデーと呼ばれる株式市場の急落を受け、シチリア出身のアメリカ人アーティスト、Arturo Di Modica さんが製作し、1989年に登場したブロンズの牛の像です。
チャージングブルの牛の像は、最初は、無許可でニューヨーク証券取引所の前に置かれていたそうですが、その後、現在のボウリンググリーン近くのブロードウェイ沿いに移されました。それ以降、チャージングブルが、ウォールストリートの象徴として存在し現在に至っています。
「ブル」といえば、よく対になるのが、「ベア」ですが、ニューヨークで「ベア」と言えば、セントラルパーク にある3匹のクマ像が思い浮かびます。この牛「ブル」と、クマ「ベア」は、金融市場の動きを表すのによく使われます。
アメリカ株式市場の代表的な指標となっている S&P500 など、金融市場では、ブルとベアがせめぎ合っていてどちらに動いていくのか常に注目されています。
ブルマーケットは、底値から20%以上上昇する上向きの状態、反対にベアマーケットは、天井値から20%以下に下がった下向きの状態を表します。
ところで、なぜマーケットで、株価の動きが上がることを「ブル」といい、下がることを「ベア」というのでしょうか?
こちら の記事によると、獲物を攻撃する時、牛は突き上げ、熊は押し倒すので、その動きから、マーケットの上がり下がりを表現する時に「ブル」と「ベア」が使われるようになった、そんな説と、あともう一つ、かつて、値下がりすることを見越して、熊を入手する前に、熊の皮を売るという商習慣があったことから、値下がりを「ベア」と呼ぶ、など諸説があるようです。
あのニュートンも財産を失ったとされる、1720年にイギリスで起こった、株価大暴落事件、南海泡沫事件 (South Sea Bubble) の頃にも、既にこの言葉は使われていたそうです。
ウォールストリートには、アメリカの株式市場の中心、ニューヨーク証券取引所 (NYSE) があります。NASDAQ など最近では、電子取引のみで、人が集まるトレーディングフロアのない取引所が増えています。ニューヨーク証券取引所でも、その中心は、データセンターでの電子取引ではありますが、現在でも、人が取引を支えています。
ニューヨーク証券取引所 (NYSE) のトレーディングフロアにいるのは、実は、証券取引所の従業員というわけではなく、かつてスペシャリストと呼ばれた、特定企業の株式の売買を専門に担当する、Designated Market Maker (DMM) と、それぞれの証券会社の専属フロアトレーダーです。高頻度取引 (HFT) で知られるシタデルのような証券会社も、実は、DMM にも力を入れているようで、トレーディングフロアでのインテリジェンスは、今でも大切なようです。
こちらは、最も有名なフロアトレーダーだそうですが、こんな感じの人が働いています。
現在、NYSE の前に立っている少女像は、以前、チャージングブルの前に登場し話題になった女の子です。
ロウアーマンハッタンには、連邦政府の建物も色々あります。証券取引所の隣にあるのは、初代大統領ジョージ・ワシントンの就任式が行われたという、フェデラルホールです。
フェドのマーケットオペレーションの中心となっている、ニューヨーク連邦準備銀行 (Federal Reserve Bank of New York) もあります。
金融に興味がある人は、ニューヨーク連銀の見学 や アメリカ金融博物館 などもおすすめです。
ロウアーマンハッタンは、オフィスビルでいっぱいですが、その合間に、Jean Dubuffet の Group of Four Trees などパブリックアートも色々と点在しています。