アメリカを代表するランドスケープアーキテクト フレデリック・ロー・オルムステッド生誕200周年 セントラルパークの設計図

明日、2022年4月26日は、アメリカの有名なランドスケープアーキテクト、フレデリック・ロー・オルムステッド (Frederick Law Olmsted) 誕生200周年記念の日です。オルムステッドは、ニューヨークのセントラルパークやワシントンDCの国会議事堂のグラウンドをはじめ、全米各地の著名な公園や大学の景観をデザインしたことで知られる、19世紀に活躍した、著名なランドスケープアーキテクトです。オルムステッドの誕生から200年目に当たる今年は、ニューヨークをはじめオルムステッド縁の地では、様々な記念イベントが開催されています。ニューヨークでは、週末、シティホール近くの歴史ある建物、Surrogate’s Courthouse で、オルムステッドらのグループが、セントラルパークのデザインコンペに提出したオリジナル設計図などが公開されていました。

アメリカ各地を旅行していると、どこか見覚えのある景観だと感じることが時々あります。そんなアメリカの数々の著名スポットのデザインに関わっていたのが、1822年に生まれ、19世紀中頃から末にかけて活躍した、アメリカを代表するランドスケープアーキテクト (Landscape Architect) のフレデリック・ロー・オルムステッド (Frederick Law Olmsted) です。今年は、ちょうどオルムステッドの誕生から200周年目に当たり、Olmsted 200 の記念イベントが全米各地で開催されています。

オルムステッドは、全米各地の著名スポットのデザインを多数手がけていますが、景観デザインのキャリアの出発点となったのが、パートナーだったイギリス出身の建築家、Calvert Vaux と共に提案したデザインが、コンペの結果、採用されることになった、ニューヨークのセントラルパークです。先日、そんな歴史的なセントラルパークのオリジナル設計図が、ダウンタウンの Surrogate’s Courthouse で公開されていました。

展示会場となっていたのは、Surrogate’s Courthouse の一角にある小さな部屋で、中央には、The Greensward Plan と呼ばれるオルムステッドと Calvert Vaux のデザイン案によるセントラルパークの景観設計図が展示されていました。当時は、美しい庭園と言えば、裕福な人々のお屋敷にあるもので、一般向けの公園というのはあまりありませんでしたが、オルムステッドが目指したものは、そんな誰もが楽しめる民主的な公園という存在でした。

設計図をよく見てみると、特に公園南部は、ザ・モール (The Mall)、シープメドウ (Sheep Meadow)、ザ・ポンド (The Pond) など今でもお馴染みのセントラルパークの景観が描かれています。

ベセスダテラス (Bethesda Terrace)、ベセスダ噴水、ザ・レイク (The Lake) などセントラルパークで最も有名なスポットも当時のデザインのままです。Naumburg Bandshell は、実際には別のデザインの建物になったようです。

大きな違いと言えば、かつては、クロトンから水が引かれ、ハイブリッジ を通り、ニューヨークの水の供給源となっていた貯水池が、20世紀前半には、使用されなくなり、埋め立てられ、グレートローン (Great Lawn) となっています。現在もある貯水池は、当時、予備用だったものです。この他、現在、人工的な小さな池のコンサバトリーウォーター (Conservatory Water) があるところは、フラワーガーデンになっていて、かつては、巨大な温室、コンサバトリーがあったようです。また、当初の公園の北端は、106ストリートでしたが、その後、110ストリートまで拡大され 1876年に完成しました。

セントラルパークの建設は、1853年に決定し、その後、精密な地形図が描かれ、そしてデザインコンペの結果を受け、The Greensward Planをもとに、実際の建設が進められていきました。
壁には、土木技師の Egbert L. Viele により、1855年に描かれた精密な地形図が展示されています。

この他、園内の主要スポットが描かれたイラストもあります。

公園の運営に関わるようになった、オルムステッド、Egbert L. Viele らによる初期の頃の年次報告書など、セントラルパークに関する歴史的な遺品の数々も展示されていました。

フレデリック・ロー・オルムステッドは、コネチカット州ハートフォード に生まれ、大人になってから、ニューヨークシティに移ります。商人、船乗り、ジャーナリストなど様々な仕事を経験し、スタテンアイランドの農園に落ち着きます。その後、イギリスなどヨーロッパを巡ったりと見聞を深めます。特に、イギリスのリバプール近郊で訪れた、誰もが利用できる Birkenhead Park の存在意義とデザインに大きな感銘を受け、その後のセントラルパークをはじめとしたオルムステッドのデザインに影響を与えました。
こちらの映像では、フレデリック・ロー・オルムステッドの生涯が紹介されています。こちらでも詳しく紹介されていますが、文学や思想、歴史、アメリカ、世界各地の見聞など幅広い体験により形成された、自然美 (Pastoral) と 複雑な構成美 (Picturesque) を大切にしたオルムステッドの景観デザインの美学は、オルムステッドがデザインした場所はもちろん、それらに影響を受けた北米の多くの所で感じることができます。

現在のセントラルパークは、こちらです。

セントラルパーク観光 ニューヨークの大人気公園の見どころ サイクリング 散策など楽しみ方紹介!

フレデリック・ロー・オルムステッドが、セントラルパークの次に手掛けたのが、プロスペクトパークです。

プロスペクトパークの見どころ ブルックリンの自然溢れるニューヨーカーの憩いの公園

それ以来、リバーサイドパーパークモーニングサイドパーク などニューヨーク周辺の公園の数々や、ワシントンDCの国会議事堂周辺、ナイアガラフォールズ州立公園、モントリオールのモンロワイヤル公園アシュビルのビルトモアの庭スタンフォード大学 など全米各地にそのオルムステッドのデザインは残されています。

オルムステッドは、19世紀後半に、ニューヨークからマサチューセッツ州ブルックラインに移り、ランドスケープデザインファームを設立します。その跡地は、フレデリック・ロー・オルムステッド国立歴史公園 (Frederick Law Olmsted National Historic Site) となっているので、ボストン旅行 の際に立ち寄ってみるのもいいと思います。

オルムステッドの引退後は、息子たちがデザインファームを引き継ぎ、1930年頃まで、父親同様、多くの公園や大学のキャンパスなどのデザインを手掛けました。ホワイトハウスの庭、ニューアークの ブランチブルックパーク も、オルムステッドが場所の選定に関わり、後に、息子たちがデザインを手掛けた公園です。オルムステッドとそのファームが関わった場所は、こちらでまとめられています。

フレデリック・ロー・オルムステッドのファンというわけではありませんが、これらすべての場所に訪れたことがあります。これらの場所へ、はじめて訪れた瞬間、なんだかすでに知っているような感覚を覚えたのが最初は不思議でしたが、オルムステッドのデザインには、彼だから作り出せる独特な魅力があるようです。有名な場所がたくさんあるので、機会があれば訪れてみてください。

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