アメリカでは、2021年12月以降、一年間に渡り、消費者物価指数 (CPI) は 7% 以上という、40年振りの高水準が続いていましたが、昨年2022年12月から、ようやく7% 以下に戻って来ました。2022年6月に、9.1% の最高値に達して以来、下降基調に転じ、急激な利上げの効果もあり、エネルギー関連価格が大幅に下落し、インフレも緩やかに落ち着いてきています。そんな中、今日、3月の消費者物価指数 (CPI) が発表されました。CPIは、昨年3月から今年3月までの一年間の数字で、市場の予想通りとなる 5.0% となりました。3月一ヵ月間の上昇率は、0.1% と、まだ引き続き上昇が続いています。変動の激しいエネルギー関連と食費を除いたコアCPIは、11月の 6.0%、12月の 5.7%、1月の 5.6 %、2月の 5.5% に続き、3月は 5.6% でした。3月のCPIは、エネルギー価格の下落により、上昇は収まりつつありますが、下落には至っておらず、目標とする 2% まではまだまだ遠い道のりとなりそうです。
アメリカでは、100年振りのパンデミックへの対策として大規模な金融緩和や経済刺激策が行われてきましたが、そんなパンデミックからの変遷期を終え、今ではすっかり日常が戻って来ています。公式には、2023年5月11日 公衆衛生上の緊急事態 (Public Health Emergency) の終了が予定されています。
昨年は、最初は、オミクロンの大流行により雇用やサプライチェーン問題、その後、ロシアによるウクライナへの侵攻、干ばつ、鳥インフルエンザなど様々な要因でインフレが加速しました。最近では、生活が通常モードに移行したことにより、オンラインでの消費などモノ消費から体験消費へと移行し、旅行、パーティ、イベントなどへの急激な需要の変化が起こっており、サービス全般のインフレが目立つようになっています。
パンデミック明けに加え、アメリカの高インフレとそれに伴う急激な利上げは、世界中にも影響を与えており、世界各国、そして日本でもインフレの傾向が強まっています。
パンデミック以降、FF金利(フェデラル・ファンド金利)がゼロの状態が続いていましたが、インフレ抑制のため、3月には 25bp、5月には 50bp、6月、7月、9月、11月は、4連続で 75bp、12月は、50bp、2月頭と3月下旬には、25bp の FF金利の利上げが行われました。今後は、目標とするインフレ 2% に向け、もう数回の利上げ、その後は、様子見状態に入ると予想されています。昨年6月からは、保有債券の売却など量的緩和の解除も行われ、9月からはそのペースも上がっています。
そんな変化に伴い、アメリカでは、預金の金利がどんどん上がっているので、アメリカに預金がある人たちにはうれしい恩恵もあります。
インフレの動向に注目が集まる中、4月12日に、アメリカ労働統計局 (Bureau of Labor Statistics) は、2023年3月の消費者物価指数 (CPI) を発表しました。3月のCPIは 5.0% となり、先月の 6.0% から引き続き下がって来ています。3月は、1ヵ月間に、0.1% の上昇となり、市場の予想通り、一年間では、5.0% となっています。
今回のインフレの大きな要因となっているのは、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー関連価格の高騰でしたが、そこから石油価格が急落し、あらゆるものの価格に影響を与えるガソリン価格が大幅に下落したことにより、CPIも、今回のインフレサイクルの最高値を更新した6月から下落に転じ、そろそろピークアウトするかもしれないという期待が持てるようになってきていました。
戦争は、現在も継続中で、石油価格の変動は、金融緊縮による景気悪化による石油需要の減退を予期したものなので、今後も、そんな予想がコロコロ移り変わるたびに、CPIに大きな影響を与える状態が続きそうです。
価格変動の激しい、エネルギーと食費を除外した、コアCPIは、一時下落に転じましたが、1月から、0.4% と再び上昇に転じ、2月の 0.5% に続き、3月も 0.4% 上昇となり、上昇が続いています。
昨年後半のCPIの変化の大きな要因は、ガソリンをはじめとしたエネルギー関連価格の下落でしたが、3月もCPIの大きな要因となったのが、ガソリンや燃料などエネルギー関連価格の下落です。長くインフレの象徴となっていた食費が落ち着いて来た一方、住宅費は、0.6%と引き続き高い上昇率となっていて、CPIに大きな影響を与えています。
多くの人々の生活に影響を与える、食費 (自宅 ―0.3%、外食 0.6%) は、ようやく横ばいになってきていますが、さらに上昇が続いているのが、住宅費 (0.6%) で、一年間で 8.2%の上昇となっています。食費インフレの代表だった卵の価格は、3月は 10.9% も下落しました。
今回のインフレ初期の象徴となっていた中古車価格は、大幅下落に転じる一方、みんなが動き出したことにより、交通費は、3月は 1.4% も上がり、上昇中です。航空券は、1ヵ月で 4.0% と上昇しています。
3月のCPI に関する詳細は、こちら です。
CPI は、今回のインフレサイクルで初めて 7% を越えた2021年12月以来、これまで、以下のように推移して来ています。12月のインフレ率 は、一年間で 7%、1月のインフレ率 は、7.5%、2月のインフレ率 は、7.9%、3月のインフレ率 は、8.5%、4月のインフレ率は、8.3%、5月のインフレ率 は、再び上昇に転じ、8.6%、6月のインフレ率 は、今回のインフレサイクルで最高となる 9.1%、石油をはじめエネルギー関連価格が急落する中、7月のインフレ率 は、8.5%、8月のインフレ率 は、8.3%、9月のインフレ率 は、8.2%、10月のインフレ率 は、7.6%、11月のインフレ率 は、7.1%、12月のインフレ率 は、6.5%、 1月のインフレ率 は、6.4% 、12月のインフレ率 は、6.5%、 2月のインフレ率 は、6.0% となっていました。
昨年は、カリフォルニア州をはじめ、干ばつにより水不足が続き、農作物の生産状況にも影響があり、例えば、カリフォルニア米などの値段が上昇しました。
カリフォルニア州では、今年に入り、一転、雨も多く、深刻な干ばつは、解消されています。今年は、豊作となるといいですね。
一方、オクラホマ州、カンザス州、テキサス州などアメリカ中央部では、深刻な干ばつが続いています。
インフレはいつまで続くの?と気になるところですが、やはり最も大きな影響を与えているのが、石油や天然ガスなどのコモディティ価格です。
原油価格の指標となっている、WTI原油先物は、昨年6月には、1バレル$120 まで上昇していましたが、その後、金融引き締めと、それに伴う景気後退の見込みにより 40%近くも下落し $75 代付近を推移していました。3月は、$70 以下に急落していましたが、4月に入り、OPEC+ による減産発表などもあり、現在は、$80 以上と再び上昇に転じています。
2022年6月に 1ガロン$5に達した、ガソリンの平均価格 は、かなり下がってきていたのですが、再び上昇に転じ、現在 $3.6 前後を推移しています。エネルギー価格の上昇は、4月のCPIにも影響を与えることが予想されます。
エネルギー価格が、最終的に安定するためには、ウクライナでの戦争の終結が重要となります。
モノ消費に関しては、在庫も増えつつあり、価格も落ち着き、デリバリーもかなりスピーディになり、正常化しています。逆に、正常化によるオンライン小売の大幅な売上減により、オンライン価格が高くなっている感じも受けます。一方、久しぶりに自由を満喫できる旅行シーズンを迎え、ペントアップデマンドにより、サービス業セクターは、ホットになっていて、まだ落ち着く気配がありません。
今回の CPI のレポートで明らかになって来たことは、仮に、エネルギー関連価格の下落が継続したとしても、一旦、あらゆるものに波及してしまったインフレを抑えることは容易ではないということです。確たるマネタリーポリシーでの相当な努力と時間が必要となりそうです。
高いレベルのCPIの推移により、2023年のソーシャルセキュリティの給付額は、8.7%アップの調整 (COLA) となりました。
今までの動向を振り返って見ると、最初は、ようやくオミクロンの大流行が収まり、通常モードに戻り、供給が正常化し、これからインフレも落ち着くのではないかと期待していましたが、ロシアによるウクライナ侵攻による経済制裁と戦禍により、エネルギーを中心に様々なコモディティ価格の高値状態が続き、インフレも長期間に渡って継続する可能性が高まってしまいました。
パンデミックにより様々な物の需給が急速に変動し、金融緩和によるアセットバブルの状態が続きましたが、利上げがはじまり、株式市場をはじめ、様々な資産の価格も大きく変動しています。インフレ時には、インフレに連動したアメリカ国債、インフレ連動債もあります。I-Saving Bond は、利率が これまでで最高の9.62% となっていましたが、インフレの落ち着きと共に下降し、現在は、利率6.89% となっています。まだまだ他と比べて有利な条件なので、地道ですが、インフレで増えている消費分をこれで少しでも取り戻したいところです。
インフレでアメリカのあらゆる物の値段が高くなっていますが、そろそろ終わりにならないかと期待したいところです。
インフレで出費が増えているこんな時だからこそ、お得にお買い物ができるよう色々工夫をしています。
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